新編清末民初小説目録 書評



●汪家熔「〓而不捨 金石可鏤――読《新編清末民初小説目録》後」『出版史研究』第6輯1998.2
●汪家熔「従《新編清末民初小説目録》看到和想到的」『図書館建設』1998年第3期1998.5.20
●寧稼雨「清末民初小説数量的最新統計」『文匯読書周報』1998.7.4
●夏暁虹「近代小説知多少」『読書』1998年第7期1998.7

 比較的長いものですから、本ホームページに画像で取り込むには少し苦しいかと思い、以上、紹介するだけです。
 なお、『清末小説から』第52号に「書評再録」として収録します。



黄錦珠「樽本照雄和他的《新編清末民初小説目録》」
台湾『文訊』別冊11号(総第151)1998.5.1





郭延礼「対中国近代小説的新認識――簡評《新編清末民初小説目録》」
『文史哲』1998年第2期1998.3.24





范伯群「一位〓而不捨的学者――介紹《新編清末民初小説目録》及其編纂者樽本照雄」
『通俗文学評論』1998年第1期1998.2.25





王学鈞「樽本照雄《新編清末民初小説目録》読後」
『明清小説研究』1997年第4期<総第46期>1997.12.10





榊原貴教「中国における西洋翻訳文学−−樽本照雄『新編清末民初小説目録』を手にして」
『明治翻訳文学通信』2 1997.12

 前号で明治期の日本においてモーパッサンが二百三十点近く翻訳発表されていたことを報告した。その一覧は、十一月に刊行された「明治翻訳文学全集《新聞雑誌縞》」31巻の『モーパッサン集T』に原典を特定して掲載したが、その明治35年の項で「五里霧中」(「バラン氏」の上村左川訳)を示し、この訳を底本として中国語訳「五里霧」が発表されたと注記しておいた。
 西洋文学の中国語訳は以前から気になっていたが、調査の手がかりがなくその実情を知ることを半ばあきらめていた。そこへ樽本照雄編『新編清未民初小説目録』(清未小説研究会発行)の刊行の案内が飛び込み、購入したところ、この本が西洋文学の中国語訳を調査するための宝庫であることを知った。もちろん本書は清未民初(一九〇二−一九一八年)の中国語で発表された小説目録であるが、翻訳書までカヴァーしている稀有な目録である。創作一一、〇四〇件、翻訳四、九七四件を収録し、著訳者索引を完備した千ページを越える労作である。
 早速、モーパッサンについて調べると、五十点余の中国語訳がこの目録から検索できた。これが日本の文学界の影響によるものなのか、清未民初という時代の転換期の要求によるものかは作品そのものに当たった上での研究を待つ以外にないが、思いがけぬことであった。
 検索した作品の原典については、訳語によってほぼ推測できるものもあるが、推測の域を出ないので差し控える。二三の作品についてのみ紹介しておく。『新編清末民初小説目録』が登録した翻訳で最も古いものは、一九〇四年十月に「新新小説」に発表された冷血(陳景韓)訳「義勇軍」とある。前述の「五里霧」は二番目の訳として、金港堂と合弁事業を行った上海商務印書館から光緒三三年(一九〇七)に刊行されている。三番目は周作人訳「月夜」(魯迅との共著『域外小説集』所収、一九〇九年七月)という。その後、一九一三年から二〇年までに約五十点の翻訳が採録されている。
 モーパッサン以外の西洋文学の翻訳で多いのは、アーヴィング、ヴェルヌ、コナン・ドイル、シェイクスピア、チェーホフ、デュマ父子、トルストイ、ハッガード、ユゴーなどである。また、日本の明治期作家たちの名も多く見受けられる。このような編纂物が目録書をベースにしてであれ、可能な範囲の著作に直接当たりつつ作成されたことは、誠に驚嘆すペきことで、多くの研究者が事あるごとに利用されんことをお薦めしたい。「明治翻訳文学全集」の巻末に付している各作家の翻訳作品年表も、私たち編者が可能な限り掲載誌紙に当たって作成はしているが、まさしく襟を正さしめてくれる目録である。
 明治期の翻訳文学の研究は、当然日本の近代とは何であったのかを問い直すことにあるが、同時にそれらが東アジアにおいていかなる反応と結果をもたらしたかを併せて知っておくことも重要であろう。私が西洋文学の中国語訳の実態を知っておきたいと思った動機は、以前、韓国から甲南大学の大学院に留学されてきていた方と知り合いになり、韓国における西洋文学の翻訳について啓発されたことによる。そこには日本の植民地支配の影響が如実に物語られていた。文化とは必ずしも人間存在の輝かしい成果ばかりを指示する概念でなかったことを知った。なお、韓国における翻訳文学の一斑を知る論稿として安宇植氏の「翻訳から見た朝鮮の近代」(「文学」一九八〇年一一月)があることを付記しておく。
(榊原)



大塚秀高(埼玉大学教授)
『東方』200号記念特別号1997.11.5

 ◆『新編清末民初小説目録』(樽本照雄編、清末小説研究会)旧版を十年間の研鑽により増補改訂したもの。先人に挑み、先人を乗り越えたのみならず、自身をも乗り越えた書。