『清末民初小説年表』目次と使用説明






目  次



本書の読み方……………… (4)
本書の使い方……………… (5)
本    文
  創作作品……………… 1a-197a
  翻訳作品……………… 1b-197b
作品名索引 ……………… 1 -111
著訳編者索引……………… 1 -136

あとがき




本 書 の 使 い 方



1 はじめに
 本書を利用するかたへ、編者からのお知らせがふたつある。

1-1 誤記の不可避
 本年表は、主として小説目録などの二次資料にもとづいて編纂している。すなわち、原本を見ることなく作業をすすめた部分の方が多い。
 日本において清末民初時期に出版された刊行物を手にすることは、それほど簡単ではない。
 できるだけ原物を見るように努力はした。 しかし、あの有名な『新小説』『繍像小説』でさえ全冊を原本で所蔵する日本の図書館は、ない。それらについては、影印本を利用する、あるいは個人の蔵書を閲覧させてもらうしかなかった。書店を通じて購入できる雑誌原本もあるにはあるが、とても完全というわけにはいかない。
 というわけで、二次資料を利用せざるをえないことの方が多くなってしまった。やむを得ないと考える。その結果、記述に誤りが少なくない。資料を相互に参照しながら、誤記が生じないようにこころがけはした。しかし、原本で確認ができないのだから、よった資料が間違っていればお手上げなのだ。単純な誤植も含んで、作業が不十分であることを最初に言っておきたい。ご教示をのぞむ。

1-2 刊年不記作品の未収録
 刊年が記載されていない作品は、本年表に収録していない。しかし、おぎなう方法はある。樽本照雄編『新編清末民初小説目録』(清末小説研究会1997.10.10)を参照してほしい。本年表は、該目録の姉妹編であるというのは、そういう理由からでもある。

2 本文
 本文についての編集基本方針は以下の通りである。

2-1 作品収録範囲
 本年表には、1840-1919年間に発表された創作作品、翻訳作品を収録する。
 小説以外の作品を掲げることもある。無視されたい。
 単行本になった作品には『』をつけた。二重カッコをつけていない作品は、雑誌掲載のものである。その場合、雑誌名に『』をつけている。

2-2 創作と翻訳
 創作作品と翻訳作品に二分した。ただし、この区分は、厳密ではない。創作とうたっていても、それが外国作品を下敷きにした作品である例もある。見分けることは、困難なのだ。ゆえに、創作と翻訳の中間に日本でいう「翻案(漢語:訳述)」という項目をたてることはしなかった。やったとしても実際の作業が複雑になるだけで、現実的ではないと判断した。いちおう二分しておいたが、今後の研究の深化にゆだねなくてはならない分野だと考える。
 見開き、左(偶数頁、a頁と称する)に、創作作品を、右(奇数頁、b頁と称する)に翻訳作品を置く。それぞれのページ下に、2a、2bのように示す。

2-3 収録作品の形態
 雑誌に発表された作品は、できるかぎり収録した。雑誌に連載された作品は、初出の発表年月の箇所に配置する。雑誌初出からのちに単行本化された作品も収録している。単行本は、初版のみである。再版以後の版本は、原則として採録していない。

2-4 年月日の表示
 西暦1840年より1年毎に「●」を冒頭に記す。
 発表作品のある年度は、文字白抜きの黒棒で表示する。

2-5 各年度内の配列順
 優先順位:月日、月、月日不明の順
 発表月日が判明しているものを優先する。次に月のわかっているもの、最後に年しか書かれていないものの順序である。
 それぞれにおいて作品名中国語音のABC順に置く。

2-6 旧暦新暦の換算
 旧暦は、基本的に新暦に換算した。
 ただし、旧暦と新暦を混在させて記述している作品については、確認する資料を持たない時、そのまま新暦としたものもある。
 たとえば、「丁未6」とあれば、これは旧暦表示である。該作品を1907年7月に配列する場合がある。しかし、一方で、「丁未7」は、そのまま1907年7月に配置する場合もある。統一できなかった。
 「光緒32.12(1906)」の「1906」というのは、光緒32年を単純に西暦になおしたにすぎない。正確にいえば、1907年になっている。ただし、旧暦と新暦をごちゃまぜにして「1906.12」と表示している作品もある。旧暦12月に限って越年させるのもどうかと考え、このまま1906年12月に配置したばあいもある。ご了解いただきたい。
 旧暦で月までしか表示されていない作品は、新暦に換算すると2ヵ月にまたがる可能性がある。確定することはできない。すなわち、換算時にすでにいくらかの時間的ズレが生じる。
 また、発行月日の表示通りに発行されたという保証はない。本年表の性質上、発行年月日の順に配列しなくてはならない。だが、その時間を確定できないことがあるのだから、だいたいの目安だと考えていただきたい。
 掲載月日が不明のものについて、便宜的に配置しているものがある。たとえば、「1918.4.11以降?」とある作品を1918年4月11日に配置したのがその例だ。拠った資料に正確な数字が記述されていないことによる。
 日本において当時の中国で発行された雑誌、単行本を閲覧できる機会は、繰り返すが、多くはない。また、中国で整理編纂された目録類にも、雑誌の取り扱いが異なっていて、すべての発行年月日が明記されているとは限らない。不十分であることは理解しているが、今回は、どうしようもなかった。それが実情だ。
 雑誌などについて、正確な月日をご教示いただければさいわいだ。
 発行月までしか判明していない雑誌で2回以上発行しているものについては、号数が順序だって配列されない例がある。これは、作品名の読み順を優先させたためだ。

3 各作品の記述――『新編清末民初小説目録』と連動
 それぞれの作品について、以下のように記述する。
 作品番号、作品名、角書、著者、原作者、訳者、掲載誌あるいは出版社、発行年月日の順に配置した。
 冒頭の作品番号は、前述『新編清末民初小説目録』所収の作品を示す。

  例:E0160 『二十年目睹之怪現状(社会小説)』 8冊 108回……

 本小説年表の記述は、必要最低限におさえてある。『新編清末民初小説目録』の作品番号E0160とその周辺を見れば、多種類の版本とその典拠資料などさらに詳しい情報を入手できるだろう。
 作品名を『』でかこったものは、単行本であることを示す。
 作品名はそままで、雑誌名を『』でかこったものは、雑誌初出であることを示す。
 作品集は、以下のようにあつかう。
 創作作品と翻訳作品を混在させているのが作品集だ。創作、翻訳それぞれのページに配列した。
 作品集の書目を掲げて収録作品を付記する(収録された作品は分離独立させていない。ただし、『小説名画大観』1916.10<影印版>のような例外もある)。
 作品集についても、索引から、それぞれの作品名で検出できる。
 「+」を冒頭に記したものは、今回追加した作品である。
 『新編清末民初小説目録』を出版後に発見した収録もれの作品は、できるだけ追加した。
 「+*」は、追加した翻訳作品であることを示す。
 索引にみえる作品番号は、本年表の作品番号と一致している。つまり、作品集に収録されている作品は、その作品集の作品番号によって示している。そうしたのは、本書での検索の便宜を考えた結果である。
 記述が『新編清末民初小説目録』とは異なることがあるので注意されたい。異なる箇所は、その後の調査で訂正したものが多い。
 発行年月日に[]を冠したものは、推定であることを示す。
 たとえば、『繍像小説』は、第13期より発行年月日が表示されなくなる。ゆえに、その発行年月日は、[]でくくって推定であることを示している。ただし、研究の結果、該誌の発行は実際には遅れていると考えらる。ゆえに、該誌は、発行月日不明の箇所に配置している。誤解のないように願いたい。
 明らかに誤りであることがわかった箇所は、訂正した。たとえば、翻訳であることを示す「*」印をつけ忘れたものには、今回、あらたに付した。その逆の例もある。番号そのものには変化がないから、検索に影響を及ぼすことはない。
 創作小説の部分に「*」を付した作品を掲げている場合がある。作品集に創作と翻訳をまぜて収録しているもので、その作品集は、創作と翻訳の両方に掲げた。
 各作品についての説明は、おおむね省いた。ただし、翻訳については、判明しているものに限って原作者、原作名をかかげる。

4 作品名索引
 作品集に収められた各作品についてもできるだけ採録する。別名も同様。すなわち、副題、別名からも、作品集所収の作品名からも検索できる。
 原作名、中国語翻訳がもとづいた日本語翻訳名などもできるだけ収録した。
 「19100508」は、1910年5月8日を示す。
 「191608」は、1916年8月を示す。
 *印は、翻訳を示す。西暦のうしろにつけた*印も同様である。本文で確認する時、基本的に右ページの「翻訳」(b頁)に配列されている。

5 著訳編者索引
 漢字の現代中国音順に配列している。
 発表年月日の早いものから順に配列する。年月順に配列してあるから該当著訳者の活躍したおおよその時期を知ることができる。
 *印は、書名索引などと同じく翻訳を示す。西暦のうしろにつけた*印も同様である。本文で確認する時、右ページの「翻訳」(b頁)に配列されている。

6 参考文献
 本小説年表作成に当たっては、多くの参考資料を利用した。
 基本的には『新編清末民初小説目録』を土台にしている。これを編集した時の参考文献は、すでに該目録に掲げた。そちらをご覧いただきたい。
 『新編清末民初小説目録』の発行後、参照した文献、あるいは掲示しわすれた文献を以下に示す(著者名中国語音順)。

陳 子善 陳子善氏の樽本照雄あて私信によるご教示 1998.2.23付
川戸道昭 森田思軒翻訳作品目録「明治翻訳文学再考――「明治期翻訳文学書全集(W)」解説に代えて」『マイクロフィルム版明治期翻訳文学書全集目録(W)』ナダ書房1996.1.30
村田俊裕 周作人の残した小説創作の軌跡とその意義――「社会小説 江村夜話」の問題を中心として―― 『日本中国学会報』第29集 1977.10.1
大塚秀高 『増補中国通俗小説書目』汲古書院1987.5.15
 ――  大塚秀高氏の樽本照雄あて私信によるご教示 1997.9.10付、1998.10.24付(謝水順、李〓『福建古代刻書』福建人民出版社1997.6の414頁複写)
渡辺浩司 渡辺浩司氏の樽本照雄あて私信によるご教示 1997.7.22付、1998.11.25付、
1999.1.18付、1999.6.12付
EVA HUNG(孔慧怡) GIVING TEXTS A CONTEXT: CHINESE TRANSLATIONS OF CLASSICAL ENGLISH DETECTIVE STORIES 1896-1916“TRANSLATION AND CREATION”DAVID POLLARD(ED.), JOHN BENJAMINS PUBLISHING COMPANY, AMESTERDAM/PHILADELPHIA, 1998 PP.174-176
法橋和彦 「トルストイ年譜」「トルストイ文献」『トルストイ全集』別巻トルストイ研究 河出書房新社1978.3.25/1984.11.15再版
飯塚 容 「『ラ・トスカ』『熱血』『熱涙』――日中両国における『トスカ』受容――」(中央大学)『紀要』第152号(文学科第73号)1994.3.25
 ――  「中国近代劇の萌芽――“文明戯”脚本の諸相」中央大学人文科学研究所編『演劇の「近代」』中央大学出版部1996.3.30
岡崎由美 「武侠の黎明――押川春浪と近代中国武侠小説」蘆田孝昭教授退休紀念論文集編集委員会『蘆田孝昭教授退休紀念論文集 二三十年代中国と東西文芸』東方書店1998.12.12
戈 宝権 「談普希金的《俄国情史》」『世界文学』1962年1、2月号(総103、104期)1962.2.20
辜美高、李金生 『新加坡国立大学中文図書館藏中国明清通俗小説書目提要』新加坡国立大学中文系漢学研究中心1996.6.30
郭長海、李亜彬 『秋瑾事跡研究』長春・東北師範大学出版社1987.12
郭 延礼 『秋瑾研究資料』済南・山東教育出版社1987.2
 ―― 「中国近代俄羅斯文学的翻訳」上 『清末小説』第20号 1997.12.1
 ―― 『中国近代翻訳文学概論』 武漢・湖北教育出版社 1998.3
横田順弥 「嘘か真か橘英男」明治時代は謎だらけ!!『日本古書通信』第63巻第12号  1998.12.15
胡 従経 『香港近現代文学書目』香港・朝花出版社1998.5
京都大学文学部図書室 『鈴木文庫目録』京都大学文学部図書月報別巻1956.12
渡辺浩司氏より関係部分の複写を拝受
京都大学文学部図書室 『鈴木文庫目録続編』京都大学文学部図書月報別巻第9 1968.5.31
渡辺浩司氏より関係部分の複写を拝受
李 国俊 『梁啓超著述系年』上海・復旦大学出版社1986.1
李 慶国 「《拳匪之原神出現》」『清末小説から』第54号 1999.7.1
栗田香子 「未来記の時代」『文学』第9巻第4号 1998.10.12
林 正章 『織田文庫図書目録』無窮会1941.1.25
渡辺浩司氏より関係部分の複写を拝受
劉 徳隆 劉徳隆氏の樽本照雄あて私信によるご教示 1999.4.4付、1999.4.20付
 ―― 「《警鐘日報》上的小説資料」『清末小説』第21号 1998.12.1
 ―― 「関於《黄面》的資料」『清末小説から』第54号 1999.7.1
劉 樹森 劉樹森氏の樽本照雄あて電子メールによるご教示 1997.11.11付
馬 泰来 「《巴黎四義人録》非翻訳小説」『清末小説から』第50号 1998.7.1
マシュー・バンソン 日暮雅通監訳『シャーロック・ホームズ百科事典』日本・原書房1997.11.5/1997.12.2第二刷
秦 和鳴 『民国章回小説大観』北京・中国文聯出版公司1995.4
森川(麦生)登美江 「梁啓超の文学作品――劇本『班定遠平西域』を中心に」『清末小説』第20号 1997.12.1
孫 継林 「《経国美談》的翻訳者周逵」『清末小説から』第25号 1992.4.1
孫 文光 『中国近代文学大辞典』合肥・黄山書社1995.12
唐〓、韓之友、封世輝、舒欣、孫慶昇、顧盈豊編 『中国現代文学期刊目録彙編』上 天津人民出版社1988.9
王 継権 『中国歴代小説辞典』第4巻近代 昆明・雲南人民出版社1993.3
 ―― 王継権氏の樽本照雄あて私信によるご教示 1997.12.25付
王継権、夏生元『中国近代小説目録』南昌・百花洲文芸出版社1998.5 中国近代小説大系80
本目録にもとづき刊年を記載する作品を約100件追加した。
王 立興 「一部首倡改革開放的小説――・煕及其小説《醒世新編》論略」『明清小説研究』1994年第1期(総第31期) 1994.3.1
王  勉 「盟鴎〓与小説《函髻記》」『中華文史論叢』第57輯 1998.7
夏 暁虹 「近代小説知多少」『読書』1998年第7期 1998.7
小林司+東山あかね 『シャーロック・ホームズ』名探偵読本1 日本・株式会社パシフィカ1978.11.30
袁  進 袁進氏の樽本照雄あて私信によるご教示 1998.9.14付
中島利郎 我仏山人著作目録(大谷大学文芸学会)『文芸論集』第24号 1985.3.30
《中国古代小説百科全書》編輯委員会 『中国古代小説百科全書』北京・中国大百科全書出版社1993.4
中央研究院歴史語言研究所 『中国研究院歴史語言研究所普通本線装書目』台湾・中央研究院歴史語言研究所1970.11
渡辺浩司氏より関係部分の複写を拝受
鄒 振環 「接受環境対翻訳原本選択的影響――林訳哈葛徳小説的一個分析」『復旦学報(社会 科学版)』1991年第3期 1991.5.10
 ―― 『影響中国近代社会的一百種訳作』北京・中国対外翻訳出版公司1996.1