正 誤 表 の 訂 正



 郭延礼氏より手紙をいただいた。氏の『中国近代翻訳文学概論』の誤りを指摘した部分について(『清末小説』第21号所載。13頁)、改めると郭延礼氏はいわれる。お役に立ってうれしい。ただし、書名、作品名は翻訳上の違いであると書かれている。たとえば、「佳人之奇遇」の中国語翻訳名は、「佳人奇遇」である、と。それは理解している。だから、「翻訳名は「佳人奇遇」だが、日本語原文は「佳人之奇遇」だ」と書いた。欧米の作品であればそれほど問題は起こらない。日本の作品がやっかいだ。同じ漢字を使用するからだ。中国語に翻訳した作品が日本語と同じならば、そのままでいい。だが、上の原作「佳人之奇遇」と翻訳「佳人奇遇」はどうなる。122頁注2の引用文は、書名を書き分けることによって原作と翻訳を区別している。「柴四朗の」とくれば日本語原作の「佳人之奇遇」だと思うのが普通だろう。それが「佳人奇遇」となっているのだから誤りだと判断した。もういちど本文を読みなおしてみると、郭延礼氏は、中国語訳名を用いて記述されているようだ。それもひとつのやり方であろう。そうであるならば、それを誤植とするのは不適当かもしれないと考え直した。該文の「佳人奇遇」についての誤植云々は、つつしんで削除する。       (沢本香子)



竺 慶 麟 氏 の 反 論



 『読書』1998年12期に竺慶麟「阿英先生没有錯」が掲載されている。本誌第52号の樽本照雄「発言のあと」に関連する。私は、「二十年目睹之怪現状」の発行年月について阿英が「一九〇六年十二月」と記述したのは誤りであると指摘した。例にあげた旧暦を、竺慶麟は、新暦に換算すると「一九〇六年十二月」だから正しいと反論する。竺慶麟の反論が成立しないのは、「一九〇六年十二月」の「一九〇六年」が新暦で、「十二月」が旧暦だからだ。中国の文章、資料で普通に見られるこの旧暦新暦混用を竺慶麟は知らないらしい。すでに認識されなくなっているということか。誤解を誘発する旧暦新暦混用の弊害が露出した実例というべきだろう。       (樽本照雄)


●● 清末小説から ●●


劉徳隆著『劉鶚散論』
昆明・雲南人民出版社1998.3

序一■陳玉堂/序二■樽本照雄/前言■  劉徳隆
試論劉鶚対甲骨学的貢献
劉鶚的夢説
阿英一篇違心的改稿
《老残遊記》版本概説
《老残遊記》手稿管見
史料中的劉鶚与蘆漢鉄路
80年代大陸的劉鶚及《老残遊記》研究
《劉観察上政務処書》簡介
劉鉄雲《十一弦館琴譜》述議
介紹劉鶚《弧角三術》
略談劉鉄雲的収蔵
《老残遊記》校点後記
関於《<老残遊記>作者所語之異事》
附:劉大紳《<老残遊記>作者所語之異事》
有関劉子恕的四件資料
刀布肩来満一筐 苔花侵蝕古文章――劉鶚収蔵古銭概述
劉鶚与梁啓超及戊戌変法
附:樽本照雄著、袁子能訳《劉鉄雲読過梁啓超的原稿〓?》
劉鶚致汪康年信之我見
宋伯魯和劉鶚詩試析
《周太谷手迹》和劉鶚題識簡析
試析黄葆年給劉鶚的一封信
毛慶蕃致蒋文田書浅析

『清末小説』第21号 1998.12.1
沢本香子○本格的翻訳文学研究の出現――郭延礼『中国近代翻訳文学概論』について
沢本郁馬○李伯元研究の広がりと深化――王学鈞編『李伯元全集』第5巻の特色
樽本照雄○商務印書館のライバル――中国図書公司の場合
王 学鈞○《東欧女豪傑》作者嶺南羽衣女士考(下)
小林寿彦○嶺南羽衣女士のこと
方 宝川○劉鶚与太谷学派関係考辨
裴 效維○仏山呉氏及呉〓人家世考略
劉 樹森○傅蘭雅“求著時新小説”:起源与終結
劉 徳隆○《警鐘日報》上的小説資料
樽本照雄○『明清小説研究』の清末小説研究――『明清小説研究』掲載清末小説関係論文目録

『明清小説研究』1998年第2期
(総48期) 発行月日不記
梅 慶吉○《呉〓人全集》出版
(韓)劉美景○中国近代短篇小説的時間(札記)
田 若虹○呉〓人小説与晩清社会

『明清小説研究』1998年第3期
(総49期) 発行月日不記
裴 效維○呉〓人家世考略
汪 叔子○劉鶚及太谷学派与維新運動関係
方 暁紅○関於胡適論《〓海花》之結構的批評

『批評空間的開創:二十世紀中国文学
研究』上海・東方出版中心1998.7
陳 平原○章太炎与中国私学伝統
孟  悦○商務印書館創辧人与上海近代印刷文化的社会構成
李 欧梵○“批評空間”的開創――従《申報・自由談》談起
王 徳威○被圧抑的現代性――晩清小説的重新評価

鍾 賢培○梁啓超的《新中国未来記》 『羊城今古』1996年3期(総57期) 1996.6
郭 長海○貴在突破創新:評《劉鶚及<老残遊記>研究》 『東岳論叢』1997年第3期 1997
湯 哲声○清末民初的翻訳小説対中国小説的影響 南京大学中文系編『文学研究』第5輯 1997.7
楊 晨曦○鴛鴦蝴蝶派研究述評 『南京社会科学』 1998年第6期
楊義著、森川<麦生>登美江訳○十九、「詩界革命」と梁啓超、黄遵憲「『二十世○紀中国文学図誌』」7『名古屋大学言語文化部・国際言語文化研究科言語文化論集』第20巻第1号 1998
程 文超○“遊”者的視線内外――《老残遊記》的文化思考 『中山大学学報(社会科学版)』第38巻第2期(総第152期)1998.3
程 華平○近代小説観念的転化与報刊業的作用 『華東師範大学学報(哲学社会科学版)』1998年第2期(総第136期) 1998.3.15
朱関田著、弓野隆之訳○印学界の一つの佳話――呉昌碩と河井仙郎・長尾雨山の交誼――「西〓印社を創始した四人と呉昌碩・河井〓廬・長尾雨山」『書論』第30号 1998.4.30
三浦 叶○長尾雨山先生の「支那古代の詩変を論ず」を読みて 『書論』第30号 1998.4.30
能田婉子○父長尾雨山の思い出 『書論』第30号 1998.4.30
王  勉○盟鴎〓与小説《函髻記》 『中華文史論叢』第57輯1998.7
石 在中○論蘇曼殊与仏教――兼与弘一大師(李叔同)比較 『華中師範大学学報(人文社会科学版)』第37巻第4期1998.7.27
袁  進○中国小説的転型期――《清末民初小説目録》 『読者導報』1998.8.5
崔 暁紅○日本の壁――『留東外史』の日常世界――上 『饕餮』第6号 1998.9.30
樽本照雄○長尾雨山の帰国 『書論』第30号 1998.4.30
○欧陽健『晩清小説史』索引 『大阪経大論集』第49巻第4号(通巻第246号) 1998.11.15
劉  〓○『劉鶚小伝』 広州・広東旅遊出版社1997.10 中外名人小伝・第3輯