清末小説から


★本誌前号で広州・花城出版社(1988.8)発行の『我仏山人文集』、およびその選集である「我仏山人作品選本」を紹介した。
 選本は、バラバラで日本に入っているのか、分かれて書店の店頭に出るのか、
あれから『二十年目睹之怪現状』上下本、『情変』と『恨海』(発行所、発行年ともに上記と同じ)を見つけた。
 『恨海』には、表題の「恨海」と「電術奇談」の2作品が収められる。校点者王俊年と王立言の前言がそれぞれの作品につけられているが、これらの前言は、本体の『我仏山人文集』第6巻には見られない。
 王立言は、「電術奇談」の原作をこまごまと説明する。ただ、典拠文献名を明らかにせず、あたかも独力で調査したかのような印象を与えている。どうやらそれが、「王立言の方法」であるらしい。氏自身が、仮に独自の高邁、斬新な理論を展開することがあったとしても、同様にほかの文献からの引き写しではないかと疑われかねない。惜しいことだ。
★「我仏山人作品選本」の一冊だが、日本で購入したものではなく、魏紹昌氏からいただいたものがある。
 我仏山人『新石頭記』広州・花城出版 社1987.9
 「新石頭記」は、王杏根、盧正言校点で、王杏根の「前言」が付く。もうひとつ、「白話西廂記」を収め、こちらは沈露霞校点、魏紹昌「《白話西廂記》新序」がある。魏氏の「新序」は、本誌第6号(1987.7.1)に掲載したものと同文だ。
★呉熕lブームではないかと思われるくらいに本が出る。それに引き寄せられたのか、すこし以前に出たものも、日本で入手できた。書名だけでもあげておく。
 呉熕l『痛史』(王俊年校点、淡如注釈)済南・山東文芸出版社1986.6
★東莞冷道人守白氏著『笏山記』が影印出版された(中国書店1988.7)。広智書局光緒34年本によったもの。同書は、名前をかえて『笏山王』として復刻もされている(長春・吉林文史出版社1988.8。晩清民国小説研究叢書)。校点者・劉英杰によると、東莞冷道人守白氏とは、蔡召華であるということだ。おなじ晩清民国小説研究叢書の1冊として、何諏「砕琴楼」と黄花奴「楊花夢」が合冊で出ている(1988.6)。


陳 平原○『書里書外』杭州・浙江文芸出版社1988.7 「青灯梵唄話小説」の項目に、鄰女語などに関する短文10篇を収める
范 伯群○対鴛鴦蝴蝶−《礼拝六》派評価之反思 『上海文論』1989年1期(総13期)1989.1.20
葛 崇烈○泰州発現劉鶚《道徳経》眉批手稿 『光明日報』1988.11.22
 喜平○近代文学研究的盛会――記全国第四届近代文学学術討論会曁中国近代文学学会成立大会 『西北師大学報』1989年1期
顧 家干○清末著名小説《老残遊記》作者劉鶚誕辰紀念活動在淮安挙行『新民晩報』1988.11.15
華躍、秦九鳳、趙暁梅○記遊一巻存心跡 甲骨千枚啓後世――記劉鶚故居 『淮安日報』1988.12?
山田敬三○中国文学の近代と前近代――中国近代文学史研究序説―― 『未名』7号1988.12
呉  邨○<編纂>『二百種中国通俗小説述要』 香港・中華書局1988.10「晩清章回小説」の項目に文明小史など23種の小説を収める
山腰敏寛○『清末民初文書読解辞典』汲古書院1989.1
鄭 炎貴○怎様評価張恨水?――張恨水学術討論会簡述 『文学報』409期1989.1.26
中島利郎○鴛鴦蝴蝶派小説関係文献目録(稿) 『大阪経大論集』187・188号合併号 1989.3.31
樽本照雄○阿英の清末小説観――中島利郎「阿英『晩清小説史』の成立」を読んで  『野草』43号1989.3.1
『明清小説研究』1988年第4期 1988.10.30

《小説叢話》作者曼殊考辨………王学鈞
“呉熕l著《白話西廂記》”質疑………王俊年
悪之花 情之果──《梼リユ評》創作傾向浅論…………………于 平
太谷学説的伝道書──《老残遊記》………徐允明
論呉熕l的文学写情意識──兼析写情小説《恨海》……………毛宗剛
簡論《呉三桂演義》………………史 平
以上、清末小説を中心にして


     本誌第13号正誤表     

10頁右 -11行 《一粒珠》→《一笠珠》
14頁右 6行 詩,或_ →詩,或
 〃  18行 嘆_離, →嘆 離,