清末小説から


★最近、 『中国近代文学争鳴』 第1輯(上海書店編輯出版1989.10)を入手した。『清末民初小説目録』の序が范泉氏によって翻訳されている。范泉氏の「附記」には、本目録の特徴として、1.日中の研究成果を充分に利用している、2.創作と翻訳、単行本と単篇をあわせ収録している、3.漢語キ音で配列していて検索が便利、4.「著訳編者索引」がついている、などがあげられている。好意的な紹介で、うれしい。ただ、同時にふたつの欠点があると指摘される。A.上海と北京の両地で出版された刊行物には、まだ未収録の少なくない小説がある。B.創作と翻訳、単行本と単篇を区別していない。未収録の小説が少なくない、という.その通りだと思う。私たちが拠った資料は、該書の解説に列挙しているとおり、主として中国で公表された目録類である。范泉氏は、私たちが見ていない出版物、あるいはそれらを収録した目録をごぞんじなのであろう。日本という外国で作業を行なっている不便さを痛感する。范泉氏が、未収の小説を具体的に列挙してくだされば、現在、進めている増補作業に組み込むことが可能だ。翻訳には、*印をつけて創作と区別している。范泉氏のいう意味は、創作なら創作でまとめて配列し、翻訳と混在させないということだろう。それに対しては、検索の二重手間になる、と私は判断している。また、雑誌掲載のものは、掲載誌を明記するようつとめたので、検索してもらえば、これで単行本と区別がつくようになっている。ただ、解説に、ひとこと触れておいたほうがよかったか、と思わないでもない。 1990.8.14

陳 平原○小説史体例与小説史研究
『中国古典小説研究動態』第4号1990.10.13
道坂昭廣○商務印書館と中国の近代『しにか』1990年11月号90.11.1
コックム恵子(Keiko Kockum)○“Japanese Achievement Chinese Aspiration: A Study of the Japanese Influence on the Modernisation of the Late Qing Novel”PLUS ULTRA, 1990(スウェーデン)
銭 理群○<書評>小説史研究的新視域
『読書』1990年第7期1990.7.10
神崎勇夫○二都書林小景――北京と上海 『しにか』1990年11月号90.11.1
魏 紹昌○『我看鴛鴦蝴蝶派』香港・中華書局1990.8
暁  式○(新゙海花)後記 陸士諤著『新゙海花』北京・中国文聯出版公司1989.10
顔 廷亮○晩清改良派華僑小説理論家邱菽園 甘粛『社会科学』1990年第3期1990.5.22
○王韜和他的小説寄懐説 蘭州『蘭州教育学院学報』1990年第1期1990.6
周 錫吹宦w閑話゙海花』中華書局(香港)有限公司1989.4


 以前、清末小説研究会編『清末民初小説目録』(中国文芸研究会1988.3.1)について、中国の研究者からつぎのような不備を指摘された。
 つまり、

 1.翻訳と創作を分けていない
 2.長編と短編を分けていない
 3.年代も分けていない

というものだ。
 以上の三点は、私たちの考えがあって意図的にそうしてある。その人には、欠陥と見えることこそ、私たちが編纂するに際して配慮した点なのだ、と述べたことがある(樽本「研究結石」『清末小説から』第14号1989.7.1)。

★『我仏山人文集』第8巻(広州・花城出版社1989.5)が出て完結。
 該巻は、戯曲、詩歌、散文、雑著を収録し、王俊年「我仏山人年譜」をも付録している。
★江蘇省社会科学院明清小説研究中心編『中国通俗小説総目提要』(北京・中国文聯出版公司1990.2)が出版されている。清末小説を含んだ提要である。清末の翻訳小説は、対象外にしているのが残念だが、便利な書物だ。