『清末小説から』第44号 1997.1.1



《清末民初小説目録》正誤


劉   徳 隆


                  

  筆者業余探討晩清小説,於《清末民初小説目録》與《中國通俗小説総目提要》兩書受益頗多。兩書編輯者之匠心、毅力使筆者深感欽佩。閲讀中也偶有發現兩書中之遺漏、錯訛,爲此隨手記録。現將《清末民初小説目録》中所發現輯録於後,以供編者及閲讀者參考。凡羅列中下劃  者,爲需補、改、移、刪處。
  補:原書未載或遺漏。
  改:原書應改正之字。
  移:原書排列有誤,應移動。
  刪:原書排印多余。
1996.6.22
【樽本照雄記】
 『清末民初小説目録』は、1988年中国文芸研究会より発行された。雑誌、新聞の初出から単行本までを収録した目録である。発行直後より開始した増補訂正作業を、現在も続行中だ。
 改訂作業のひとつは、未収録の作品を増補することである。発行時よりもその収録件数は約1.5倍に増加している。
 作業のもうひとつは、主要な典拠資料を明記することだ。そのため全項目を再点検することになった。それでも見落しがある。
 このたび、該目録について劉徳隆氏より貴重なご指摘をいただいた。まことにありがたい。
 現在までの増補訂正作業の一端を紹介することをかね、それぞれの項目について報告したい。★印が私の注記である。
 なお、使用した略号は、以下の通り。

[阿英]――阿英編「晩清小説目」『晩清戯曲小説目』増補版 上海・古典文学出版社1957.9
[叢書]――上海図書館編『中国近代現代叢書目録』香港・商務印書館分館1980.2
[大辞]――馬良春、李福田総主編『中国文学大辞典』全8巻 天津人民出版社1991.10
[大典]――陳鳴樹主編『二十世紀中国文学大典』(1897-1929)上海教育出版社1994.12
[民中]――北京図書館編『民国時期総書目(1911-1949)』文学理論・世界文学・中国文学 北京・書目文献出版社1992.11
[欧蕭]――欧陽健、蕭相пu《晩清小説目》補編」『文献』1989年2期(総40期)1989.4.13
[書坊]――韓錫鐸、王清原編纂『小説書坊録』瀋陽・春風文芸出版社1987.11
[提要]――江蘇省社会科学院明清小説研究中心編『中国通俗小説総目録提要』北京・中国文聯出版公司1990.2。数字は、初版の頁数を示す。
[西諦]――北京図書館『西諦書目』文物出版社1963.10
[越然]――周越然「稀見小説五十種、稀見訳本小説」『版本与書籍』上海・知行出版社1945.8

p.190
補 G095-1 狗骨談(短篇小説之一)
警僧
《新世界小説報彙編》1906年
★劉徳隆氏からの来信によりすでに増補済み。それによると、「新世界小説社1906? 新世界小説社報彙編」と記述している。「彙編」はシリーズものだろう。ただ、その呼称が食い違っている。
p.227
補 H057-1 海上魂
陳墨涛著 孫遜 孫菊園校點
湖南人民出版社 1985年
★[提要993]で増補済み。
p.290
補 H668* 環瀛志險
★訂正済み。[阿英164][大典95]
p.290
補 H669* 環瀛志險
★訂正済み。[阿英164][大典95]
p.293
補 H697* 幻想翼
★訂正済み。[阿英115]
p.304
改 H809 繪圖祕本小説義和團
(李伯元)
1910
李伯元《庚子國變彈詞》
★ご指摘に感謝。
p.306
移 H828 → H825之後 爲826
  H826        爲827
  H827        爲828
★この3件は、書名の読み音に関するものだ。H825は「渾沌国」、H828「混沌国」で著者はどちらも僕庵となっている。劉徳隆氏は、同一作品だから続けて配列せよというのだろう。しかし、問題はそれほど単純ではない。H825「渾沌国」は、上海図書館編『中国近代期刊篇目彙録』(全6冊 上海人民出版社1980.7-1984.8)に収録されている『民国報』に拠っている。「渾」は、HUNの第二声である。H828「混沌国」は、[阿英174]の記述だ。「混」は、HUNの第四声。同一作品であることはわかる。しかし、渾か混か、どちらが正しいのか原物を見ていないので断定できない。原文の記述通りにするのがいいと判断する。
p.374
補 K055* 克來武傳
★訂正済み。[叢書448]
p.383
補 K142-1 苦學生
商務印書館(1915)
★増補済み。[欧蕭79][提要944][大典100]
p.485
補 M299-1 迷津筏
夢醒樓主感著
鈔本 無序跋 無撰抄年月
★増補済み。ただし、新しく項目をたてるのではなく、M299に注記した。[欧蕭82]鈔本[提要1238][大辞4570]
p.486
改 M311 蜜蜂計
★訂正済み。[欧蕭89][提要1089]儲仁遜抄本小説之一[大典]は、1911刊とする。
p.529
補 N220-1 女豪傑 1册
佚名著
武林印刷所印行 光緒29年癸卯(1903年)
★増補済み。[欧蕭71][提要893][大典56]
p.531
補 N232-1 女界寶 6册 8集
李定夷総纂 包獨醒校訂
國華書局印行 民國六年十二月初版,民國七年三月再版
★劉徳隆氏よりの来信によりすでに増補済み。[民中07739]
p.593
補 Q370 情魔
1910年4版
★ご指摘に感謝。
p.595
補 Q394-1 情天恨
嘯虹
上海圖書館 1913.10
★ご指摘に感謝。上海・国学書室1913.10は、増補済み([民中09366][大典261])。明らかに出版社が異なるので増補する。
P.622
補 S014-1 三白桃傳
東納著 枕亞 鐵冷評
靜得軒發行 民國五年五月一號發行
★劉徳隆氏からの来信により増補済み。
p.643
補 S218 射雕記
日本國壽百氏撰 夢筆生序
上海書局石印本 光緒三十二年仲秋版
★増補済み。[提要851][大典54]は、1903.9刊とする。
p.646
刪 S247 (因與p.645 S235重複,應刪)
★ご指摘に感謝。
p.648
補 S269-1 神州歡夢記
填恫恨海氏編
1905年4月
★増補済み。[欧蕭82]1905年4月《二十世紀之支那》第1期広告載。雑誌の広告にもとづいていることがわかる。[提要924][大典87]は、1905.5刊とする。
p.663
補 S414-1 十葉野聞 (清祕史)上下册
許指嚴著作 包獨醒校訂
上海國華書局 民國六年七月出版
★増補済み。[民中08165]には、1917年7月の国華書局のものが掲載されている。そのほか、中華書局1916.7刊があるらしい。
p.664
補 S426-1 十姉妹 六册
海上警夢癡仙漱石氏
文明書局 中華民國九年十二月三版
★劉徳隆氏からの来信によりすでに増補済み。[民中09282]
p.692
補 S700 死椅
新世界小説社彙編 1906
★増補済み。L.T.MEAD著[阿英119]ただし1906年刊とは知らなかった。ご指摘に感謝。
p.735
補 W019 糸丸袴鏡
1911.6
★『小説大観』第2集(1915.10.1)が初出である。それにさきがけて1911.6刊のものがあるという意味だろうか。疑問としておく。
p.760
補 W266 無底洞
中外小説社石印
★増補済み。[阿英92]石印本[提要1246][大典219]は、1911刊とする。
p.765
補 W310 呉三桂演義
上海書局石印本 宣統辛亥(1911)
★増補済み。[欧蕭77]石印本[提要1253][大典218]は、1911.11刊とする。
p.788
補 X137-1 仙侠五花劍 六巻三十回
海上劍癡撰
聚珍版小型本 光緒辛丑(1901)
★増補済み。笑林報館1901。[西諦6078][欧蕭74]出版社不記[提要841][書坊666-1][大典]は、出版社を明記せず。
p.816
補 X405 新鬼世界
《神州日報》本 宣統二年(1910)
★増補済み。[阿英99]により掲載誌を『神州日報』画報本とした。しかし、[提要1199]には『神州報』本宣統二年(1910)とある。首都図書館所蔵と書かれており原物を確認しているようなので、『神州報』と訂正する。[大典205]
p.818
刪 X423* 新紀元
★訂正済み。武禧(劉徳隆)「碧荷館主人的《新紀元》」(『清末小説から』第17号1990.4.1)によった。
p.827
補 X504 新天地 (上下集 滑稽時事小説)
上海集文書庄 宣統二年春季
★増補済み。[阿英175]は、上海集文書荘としている。集文書局とするのは[提要1198]だ。[大辞6019]は集文書荘とするなど、2種類の記述がある。併記するに留める。
p.828
補 X514-1 新文章遊戲
西冷生編纂
新小説社 宣統3年11月初印刷
   3年11月中旬出版
★劉徳隆氏からの来信によって増補済み。
p.828
補 X514-2 新文章遊戲 (滑稽文)
曹繍君編輯
改良小説社 説部叢書 1910
★ご指摘に感謝。
p.856
移 X790 血泊恩仇記 應移至p.853 X760之後
★ご指摘に感謝。書名の中国音を読み間違えていた。訂正したい。
p.857
移 X791 血泊鴛鴦 應移至p.853 X761之前
★ご指摘に感謝。同上。
p.993
補 Z387-1 鑄錯記 8回
傷心人
新世界小説社 光緒三十三年九月初印刷,九月中旬出版
★増補済み。ただし、Z386に「光緒33.9(1907)」と追記した。別項目を立てていない。[阿英108][大辞5735][大典105]
【樽本後記】『清末民初小説目録』は、一千頁を越えている。そのすべてを点検くださった劉徳隆氏にあらためてお礼を申し上げたい。研究者で、わざわざ原稿にしてご指摘くださる方は、めったに存在しないからだ。重ねて感謝の意を表明する理由である。より充実した目録とするために今後とも努力したい。