『清末民初小説目録』に「新編」とつける理由

 魏紹昌主編『中国近代文学大系』第12集第29、30巻史料索引集1、2(上海書店1996.3、7)は、清末民初の小説を中心とした資料集として注目に値する。
 年表、雑誌目録、紹介、研究文献目録によって構成される。貴重な雑誌、文芸新聞も収録紹介していて有用である。
 上海図書館編『中国近代期刊篇目彙録』全6冊(上海人民出版社1965.12/1980.7-1984.8)が、雑誌の細目を集成し、まことに便利だった。史料索引集には、この大部の彙録にも収められていない雑誌を探しだしているのがよろしい。とくに文芸新聞は、珍しいものを多く紹介していて、まことに驚嘆するのだ。
 新しい資料は、座っていては出てこない。地道な作業によってようやく日の目を見る。資料発掘作業は、論文を書くことに較べて低く見られる傾向があるのではないか、と私は疑っている。論文の基礎となる資料を軽視することにならないのか、この矛盾に気がつかないのも不思議なものだ、などと思ったりするのだ。
 有用な資料は、有用だからこそ大いに活用すべきだ。史料索引集に収録あるいは紹介された小説は、現在も増補訂正作業を継続している『清末民初小説目録』とまず照合する。目録に未収録の作品は、取り入れる。字句に異同があれば、注記する。これらの作業をくりかえした。
 約6,800件の項目を照合し、そのうち約1,000件を目録に追加する結果となる。
 『清末民初小説目録』は、創作10,869件、翻訳4,865件、合計15,734件で作業をほぼ終了した。各作品について出典を明記するなどして、数量ともに以前の目録とは異なる。これが、『新編清末民初小説目録』と題する理由なのだ。(樽本)