編 集 ノ ー ト


★おまた。1983年に中文版を出してから1年ぶりの発行である★中国文芸研究会『野 草』第33号は清末小説特集(その2)だった。編集を担当し、日本中国アメリカの研 究者から原稿をいただいた。中国語論文は翻訳して掲載したのだが、そのままにして おくのは惜しい。そこで『清末小説研究』中文版として中国語原文を発表したのだ。 『野草』の副産物だから市販はせずじまい★去年、本誌を発行しなかったのは私の天津留学のためだ。天津図書館で『天津日日新聞』は見ることが出来なかった。しかし、天津日日新聞版『老残遊記』初集に巡り合えたのは幸運といえるだろう。長年の胸のつかえがおりた(樽本「天津で見つけた『老残遊記』初集」『中国文芸研究会会報』第48号1984.9.15)。図書館には二つの機能がある。保存と利用、だ。中国の図書館は、保存の方に力点が置かれているように思える。書籍を簡単に見せてもらえない。中国人研究者の不満が新聞に載るくらいだ。そういう状況のもとで本誌にも紹介したいくつかの本に出会えたのはうれしかった★毎日のように通ったのは煙台道の古籍書店だ。私が買う本の傾向をいちはやく察した店員が、ほら、と差し出したのが中山大学中文系編『中国近代文学研究』第1輯である。毎年、数冊出すとあるが、あれから1年半、第2輯はまだらしい★勧業場斜向いの喫茶店「康楽」3階で、飲物としては一番高いマックスウエルのインスタント・コーヒ8角を飲みつつ読んだのが、汪家熔「《繍像小説》及其編輯人」(『出版史料』第2輯1983.12)。汪家熔氏との討論は、私の留学生活に彩りを与 えてくれた★帰国してみると、台湾で晩清小説大系全37冊が出版されている。雑誌では清末小説研究が特集される(中島利郎「台湾における晩清小説研究」『中国文芸研究会会報』第53号1985.6.30) 張純氏が『晩清小説研究通信』を発行する。いやはや、数年前には想像もつかなかった、うれしい事態が出現している。やる気が出ようというものだ。フフッ