編 集 ノ ー ト


★今年は、私にとって国際学会の年だった。1990年夏、中国文芸研究会の会員(家族を含む)と香港に行ったのがひとつのきっかけである。複数の会員が、香港、台湾の中国文学研究者と会合をもち、その結果が1991年8月末の「二十世紀中国文学――台湾、香港、日本三地学者学術交流」開催となった。一方、10月に上海で中国近代文学研究関係の国際学会を催すという連絡も入っており、こちらにも参加することになる。さらには、5月末、台湾の中央研究院主催で国際学会を実行すると責任者の呉宏一氏より参加をうながされる。しかし、前述の予定がありその準備のため、こちらは見送らざるをえなかった。1年に2回の海外学会参加ということになったのだ★本年に国際学会が集中したのは、偶然のことだろう。だが、各国各地の研究者が、政治の壁をこえつつ一堂に会する機会が持てるようになったのは、明らかに、ここ数年来の顕著な変化のあらわれである。加えて、「清末民初」(中国では近代文学)時期の小説研究が、以前に比較して重視されつつあるのも、私にとってはうれしいことだ★世界の研究の潮流は、好ましい方向に動いている、と私には感じられる。ひるがえって日本ということになると、いささか異なる。清末民初小説に関する「日本語の論文が読みたい」と書いたことがある。本号をご覧いただければわかるように、私の願望はかなえられていない。すこし残念に思う★「研究に国境はない」という私の編集方針からすれば、日本語にこだわるのは、矛盾しているといわれてもしかたがない。まあ、しょうがないか。なるようにしかならない★本誌は、日本語、中国語(編集、印刷の都合上、この二言語に限る)の区別なく、発見のある論文を歓迎する。原稿料は支払えない。掲載誌を10冊、著者に送りお礼にかえる。原稿締め切りは、毎年8月末日。二重投稿はご遠慮願いたい。