編 集 ノ ー ト


★最初におことわりから。本号に掲載を予定していた抽絲主人『海上名妓四大金剛奇書』(下)は、紙幅の関係で次号以降の掲載としたい★さて、変化は、突然、展開される。それも同時進行形でくりひろげられるから、目をみはる★上海・商務印書館と東京・金港堂の合弁問題は、これまで研究者のごく一部に知られていたにすぎない。商務印書館に勤務していた朱蔚伯自身が、「この合弁について商務は宣伝することはしなかったから、外部で詳しい事情を知っている人も多くはなかった」(「商務印書館是怎様創辧起来的」『文化史料(叢刊)』第2輯1981.11)と述べているくらいだ。中国で「自力更生」が叫ばれる時代に、この合弁問題を研究する研究者がいることなど想像することはできなかった★時はめぐる。「改革開放」がとなえられ、外国資本の導入が大いに奨励される現在ではどうなったか。商務印書館と金港堂の合弁が、大いに注目される。商務印書館が外資を利用し、しかもそれに成功したと積極的に評価し直されるわけである★「歴史学をある種の政策の注釈としてはならない。しかし、歴史研究活動は、ある時空の背景のもとに進むものであり、改革開放の現実は、商務印書館と金港堂の合資の歴史に対して我々が新たに評価を加えることに影響を及ぼさないわけにはいかない。外資を利用することは、近代中国の対外関係のなかでの重要な内容であり、外資を利用することに成功したという実践は、中国近代史の貴重な財産となるべきものである」(鄒振環「商務印書館与金港堂」『出版史料』総第30期1992.12)★現代中国では、相変わらず政治と研究が直結しているのがうかがえる。ともあれ、これを機会に中国での史料発掘が活発になれば、研究にどれだけ益するかわからない。本当に