★炎暑の大阪を飛び立つと韓国ソウルは連日の雨であった。市内の交通渋滞は、某宗教団体の合同結婚式が関係しているのではなく、漢江の水が溢れて通行できない場所が発生したのが原因という。
★本年(1995)8月、韓国ソウルで開催された第15回中国学国際学術大会に参加する。この15年間、毎年国際学術討論会を開いていると聞き、そのエネルギーに感心した。事前に郵送した論文は、「発表論文要旨」と表紙のついた分厚い冊子となって配付される。この事を見るだけで運営に慣れていることがわかる。
★台湾、中国大陸からの研究者、あるいはソウルの大学で教鞭を取っている中国人研究者の参加をまじえ、文学関係は、古典から現代文学史まで範囲は広い。
★たくさん名刺をもらった。博士号取得者が7割をこえている。中に、「『待遇』助教授」と印刷してあるものがあり、聞くと博士号を取れば教授が約束されているという。韓国では、現在、研究職につこうと思ったら欧米並みに博士号を持っていなければ無理なのだそうだ。その留学先は主として台湾で、中国と国交が樹立された3年前からは中国大陸に留学する学生が多い。そういえば昨年、北京大学で、留学生数は、韓国人が日本人を上回っていると聞いた。時間的に見れば、そろそろ大陸で博士号を取得する人が出現するころだ。
★以前、外国からの文科系留学生が日本を希望しない理由は、博士号が取得できないからだ、という新聞記事を読んだことがある。日本の博士号についての考え方が、欧米とは異なる。欧米では、文科系の博士号は、研究する基礎能力があることを認めるものだ。韓国では、すでに欧米の習慣が定着しつつあるのだろうか。
★などと今さらながらの感想をいだいたのも、はじめてのソウルを体験した副産物であるのかも知れない。