●清末小説 第20号 1997.12.1


 編 集 ノ ー ト


★本誌20号の発行を祝って原稿をくださった方々に感謝します★紙幅の関係で分割掲載にせざるをえない論文が、複数出ることになった。漢語原稿は、日本語に比較して2倍以上の手間がかかるのが主な理由である。分載にするからには、次号も必ず発行することを約束したようなものだ。安心してほしい★20号だからといって、今までと異なる紙面構成にはなっていない。ページ数が160頁を超えたのが、20号記念号らしいか。それだけでは愛想ないので、『清末小説(研究)』と『清末小説から』の著者別総目録を作成した。参考になればさいわいだ★『新編清末民初小説目録』の発行については、どうしても言及しないわけにはいかない。「新編」とあるように、旧版『清末民初小説目録』を発行したのが1988年のことだった。あれから約10年になる。在庫はなくなり、研究者の要望に添えない情況がつづいている。その間、増補訂正作業を継続しながら、清末は、やはり雑誌の時代であることを再確認した。定期刊行物に掲載された小説の出現は、それ以前の中国には、ほとんど見られなかった形態のものである。新しい時代を反映する小説目録には、新しい編集方針が必要であることは、いうまでもない。旧小説の目録が、広い意味での単行本を主体としたものになるように、清末小説からは、雑誌に重点を置いた目録になるのは、必然なのだ。雑誌掲載の小説を網羅する。これが、雑誌主義である。雑誌主義を目録の編集方針とし、入手できるかぎりの資料にもとづいて『新編清末民初小説目録』を編集した。雑誌初出から最近の復刻まで、創作と翻訳を合わせて約1万6千件のデータを収録する。本文二段組で約1千頁である。旧版よりも収録件数が大幅に増えているにもかかわらず、ほぼ同じくらいの頁数におさめることができたのは、二段組にしたからだ。清末民初小説の履歴書となるよう意図したし、結果は、その通りになった。日本での編集作業は、不充分なものにならざるをえないが、今後の研究にお役に立ちたいと願うのみだ★増補訂正作業が、これで終了したというわけではない。中国大陸で清末小説の大型叢書を出版するという広告を見かけた。今まで同様、今後も復刻出版があるだろう。これらはできるかぎり収録する。ただ、個人の力には限界があり、誤りをおかすのを避けることができない★たとえば。曼殊室主人という筆名を持つ人物は、梁啓超、梁啓勲、麦孟華の三人がいる。『新小説』に掲載された「俄皇宮中之人鬼」(アップワード著、徳冨蘆花訳「冬宮の怪談」『外交奇譚』1898)には、この曼殊室主人が使用される。1982年に「新小説総目録」を作成したとき、三人の名前を併記して特定しなかった。その後、どういうわけか曼殊室主人を麦孟華だと思い込み、『清末民初小説目録』にそう注記する。『新編清末民初小説目録』でもそれを踏襲した。本誌掲載の森川登美江論文は、曼殊室主人を梁啓超だとする。改めて調べると、なるほど森川氏の拠った文章およびその他の文献にそう書かれている。訂正表が必要になるのだ。いくつかの資料があるにもかかわらず、思い込みが誤りを引き起こす。現在も訂正作業を続けている。ご教示をお願いしたい★清末小説研究会は、本誌(年1回発行。市販あり)および『清末小説から』(年4回発行。直接購読のみ)を発行している。はじめて目にする人のために、編集方針と投稿について説明しておく。
●編集方針は発情継交である。
 「発見」のある文章を掲載し、
 「情報」交換を重視しながら、
 「継続」発行をめざししつつ、
 「交流」は双方向でありたい。
●清末小説を中心に民国初期小説も含む。
●投稿された原稿を返却することがあるが悪しからず。
●原稿料は、支払うことができない。
●論文資料の掲載誌10冊を贈呈する。
●論文の二重投稿は、遠慮されたい。
●論文を転載する場合は、初出が本誌であることを明記してほしい。
 『清末小説』は、1万2千字前後、『清末小説から』は、4千字前後の原稿が適当だ★インターネットに清末小説研究会のホームページを設置している。『清末小説』と『清末小説から』の既刊号のいくつかを掲載する。そのほか研究論文目録、研究ガイドなども掲げているから、興味のある人には役立つだろう★21年続いたものならば、今後、同じ時間はすぐに経ちそうだ