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付建舟『清末民初小説版本経眼録・清末小説巻』102、104頁より引用


2016.12.20
 付建舟『清末民初小説版本経眼録・清末小説巻』(北京・中国致公出版社2016.1)は、いままでの経眼録シリーズ5種類に収録していない版本が主となっているようです。
 書物の写真を掲げて実物で確認しているところに価値があります。
 ところどころに「樽氏目録」が出てきます。これは樽目録X(2015)を指します。X2(2016)ではありません。
 批判的に引用されますのでここで反論しておきます。

 たとえば、「凄風苦雨録」(1907)です。
 樽目録Xでは、「商務印書館 光緒33.10(1907)」と「中外日報館 光緒33(1907)」のふたつを別々に掲げています。
 付建舟氏は、前者だけをとりあげて誤りだと指摘します。

 《樽氏目録》第3128頁記載“商務印書館 光緒33.10(1907)”,可能有誤,誤認為商務印書館代印為商務印書館出版。101頁

 掲げられた表紙と奥付写真を上に引用しておきました。
 それを見れば、たしかに付建舟氏の指摘通りだと思えます。
 しかし、それでは樽目録Xには中外日報館1907も掲載していることを無視しています。注意不足です。中外日報館本もある、と書き添える必要があると考えます。

 私が付建舟氏の指摘に不満を感じるのは、樽目録Xの使用方法を理解していない点です。
 樽目録Xの冒頭には「編者からかさねてのお願い」を掲げています。今まで経験から、利用者が樽目録Xの使い方を知らないという事実を思い知らされているから書きました。一部分を見て、間違っていると断定する中国人研究者がいるのです。
 最後部分に念押しをしておきました。

 「本目録は工具書だ。論文に引用されることはたぶんないと思う。ただし、どうしてもいうばあいがあるかもしれない。その時は注釈欄に掲げた典拠資料を確認のうえお示し願いたい」

 注釈欄に重要な情報を記述している。それをあわせて全体を判断してほしい。そういう意味を込めています。
 なぜそのように説明したか。

 目録の編集をはじめて30年近くの年月が経過しています。最初は基本的に各種目録を材料にしていました。当時の中国では実物を見ることはほとんど不可能でした。やむをえない方法だったのです。
 ですから、もとの資料が間違っていると樽目録も誤る。当然のことでしょう。
 最近は、研究環境が以前と比較して格段に整備されてきました。図書館で書籍の複写を許可するようになりました。だいたい、複写機そのものが中国にほとんどなかった時代に私は目録編集作業をはじめたのです。インターネットなど出現する以前の話です。
 利用できる資料が増えてきた。それにともない刊行物の実物を確認して編集する目録も出てきています。必要に応じて樽目録に追加して記述しているのはいうまでもありません。
 重要なことですが、その時最初の記述はもとのままにしています。訂正していません。誤りだからといって訂正してしまうとそれまでの経過、研究の積み重ねが消失するからです。注釈の典拠資料をたどっていけば、正しい認識が得られるように配慮しています。単純に冒頭の書名、著訳者、掲載雑誌、単行本の出版社、刊年を見ただけで間違いと断定するのは、誤りです。

 付建舟氏の例をふたつあげます。
 ひとつは、出版社について。
 上に示した付建舟氏が樽目録の誤りだと指摘する「凄風苦雨録」です。樽目録Xでは、商務印書館と表示したままに残しています。それが代印だとは実物を見ない限り誰にもわかりません。
 私が樽目録Xで商務印書館発行だと書いた根拠を以下に列記しましょう。記号は現行の樽目録X2でも共通です。

 [提要1021]光緒三十三年(1907)十月商務印書館初版本
 [大典127]は商務印書館初版本、中外日報館刊印、1907.11刊とする
 [近大828]章回小説、光緒三十三年(1907)商務印書館初版本
 [古大932]光緒三十三年(1907)十月商務印書館初版本
 [通典599]近代章回小説、光緒三十三年(1907)十月商務印書館初版本
 [書坊訂811-10]上海・商務印書館、光緒三十三年鉛印
 [編年196]商務印書館、十月
 [目白264]有光緒三十三年(1907)中外日報館刊本及同年十月商務印書館刊本
 [古提731]18回、廃物、或乃黄権ママ。光緒三十三年(1907)上海商務印書館排印本、題「著者廃物」。1926年上海文明書局排印本、為2巻22回、題「上杭黄権著」
 [劉晩310]商務印書館1907年
 [涵著89]発行処:本館(商務印書館)光緒三十三年
 [ケ315]光緒三十三年(1907)商務印書館初版本

 実物を見ているものを含めてほとんどが誤記している。
 樽目録Xの間違いだと指摘することは、すなわち中国の先行研究、目録が間違っていると批判することと同じことになるのです。
 わざわざ「注釈欄に掲げた典拠資料を確認のうえ」と私がことわっている理由がここにあります。目先の誤りを批判したつもりで、中国人研究者が長年積み重ねてきた努力の結果を否定する結果になるのですから。

 もうひとつの例も似ています。
 掲載雑誌の未収録があるというのです。同じく、樽目録の冒頭部分だけを見て付建舟氏は間違いだと指摘します。正しく記述している注釈部分は見ていないらしい。
 「恩仇報」という作品です。『中外小説林』に連載されました。
 付建舟氏は、次のように説明します(113頁)。

 《樽氏目録》第795頁記載“《中外小説林》11-17期丁未年8.21-12.15(1907.9.28-1908.1.18)”、遺漏第十期的第一章。

 第10期に掲載された第1章を掲載していないという指摘です。
 一見正しいが、実は間違い。第10期を収録していないのは[彙B2274](すなわち『中国近代期刊篇目彙録』)が未収録だからです。以前の典拠資料を残しているのは、くり返しますが過去の蓄積を(それがたとえ間違ったものであっても)記録しておくためです。
 注釈を見てもらえれば正解が得られることになっている。
 [編年B1329](陳大康『中国近代小説編年史』2014)に第10期の第1章を収録しています。

 樽目録Xは、研究のための手がかりを提供している。その「説明」をもういちど読んでほしい。
 他人の記述を批判をするばあいは、短絡してはなりません。頭を働かせて注意深くあってほしい。そう思うのです。




付建舟『近現代転型期中国文学論稿』
南京・鳳凰出版伝媒集団、鳳凰出版社2011.6


2016.12.17
 内容は以下のとおり。
 ============
 関愛和「序」、
 緒論 “近現代転型期中国文学”導論、
 第1章 創作主体論、
 第2章 文学運動論、
 第3章 文学観念論、
 第4章 文学類型論、
 第5章 文学創作論、
 第6章 文学翻訳論、
 第7章 文学伝播論、
 参考文献、
 後 記




付建舟『清末民初小説版本経眼録・清末小説巻』
北京・中国致公出版社2016.1


2016.12.16
 同シリーズ第6冊目。清末(1893-1911)の小説(単行本その他)104種を収録する。表紙と奥付の写真を掲載するのが特色。所蔵機関を明示して便利。付建舟「清末民初新小説広告的文学史意義(代前言)」


付建舟『清末民初小説版本経眼録・民初小説巻』
北京・中国致公出版社2016.1


 同シリーズ第7冊目。清末(1912-1929)の小説(単行本その他)105種を収録する。表紙と奥付の写真を掲載するのが特色。所蔵機関を明示して便利。付建舟「民初市民作家的文学観念及其意義(代前言)」




《老書店》編輯組編『老書店』
北京・中国文史出版社2017.1 韓淑芳主編「民国趣読」


2016.12.10
 中華民国時代の出版社、雑誌、書籍、編集者などについての回想を集めています。
 以下のとおり。
 第1輯 老書店、第2輯 老書局、第3輯 老書社、第4輯 老刊物、第5輯 教科書与工具書、第6輯 民国出版之大人物、第7輯 民国書業之大事件




張春田編『“晩清文学”研究読本』
桂林・広西師範大学出版2016.7 中国現当代文学研究前沿問題読本叢書


2016.11.29
 主として2000年以後に発表された論文を集めています。李欧梵、陳建華「帝制・共和・復古――晩清文学及其他(代導言)」がある。総論、思想、考証、古与今などに分類します。論文名だけのものは参考文献なのでしょう。



2016.11.27
 『瑞西独立警史』の底本について指摘しました。
 その時「たぶん誰も指摘していないと思います」ともつけ加えています。
 さっそくメールをいただきました。底本についてはすでに誰かが書いていなかったか、というご指摘です。
 ご教示をありがとうございます。
 『清末民初小説目録X2』の該当部分に典拠として以下を掲げました。

 [中村73-149]角書不記、山田郁治訳『哲爾自由譚』?ママ(一名自由之魁、視而列爾シルレル著、松湖漁史訳述、泰山堂1882.10)

 上記のとおり故中村忠行氏は、「山田郁治訳『哲爾自由譚』?」と書いています。
 「?」をつけて疑問のままにし確定はしていません。その理由は当時『瑞西独立警史』を見ることができなかったからです。
 どこから日本の『国民之元気』を引っぱってきたかというご質問でしょうか。
 それについては、いつかご紹介する機会があると思います。



 
『(最新小説)瑞西独立警史』影印本       『(血涙万行)国民之元気』


2016.11.26
 陸龍朔(一説に祥)訳『瑞西独立警史』(日本・訳書彙編社 光緒二十九年五月二十八日(1903.6.23))は漢訳「スイス独立史」ともいうべき作品です。ウィリアム・テル伝説を組み込んだ冒険恋愛小説だと考えます。
 これの底本を報告します。
 谷口政徳(睨天逸史)纂訳『(血涙万行)国民之元気』前後編(金泉堂1888.1)です。両者の書名には共通点がありません。
 たぶん誰も指摘していないと思います。


2016.11.22
 『清末小説から』第124号(2017.1.1予定)の目次は以下のとおりです。
 ========================
 漢訳ラム『シェイクスピア物語』の序 4完――「区別がつかない論」再び………樽本照雄
 いくたびかの阿英目録15………樽本照雄
 新しい「説部叢書」研究………神田一三
 林訳『伊索寓言』の底本(下)――挿絵の謎を解く………沢本郁馬




李貴生『疏証与析証:清末民初中国文学研究的範式転移』
北京・中国社会科学出版社2016.8


2016.11.13
 内容は以下のとおり。
 ============
 緒 論、
 第1章 王国維新経学的承先与啓後、
 第2章 王国維純駁互見的文学観、
 第3章 蔡元培紅学的研究歴程与学術淵源、
 第4章 胡適新紅学与析証法的本質特徴、
 第5章 胡適中国文芸復興的建構及其作用、
 余 論、
 引用書目、
 後 記




蘇明『域外行旅与文学想像――以近現代域外遊記文学為考察中心』
北京・中国社会科学出版社2016.8


2016.11.2
 内容は以下のとおり。
 ============
 馬俊山「序」、
 緒 論、
 第1章 由実用到審美:近現代域外遊記散文的転型、
 第2章 変革与衰頽:旧体域外紀遊詩的現代命運、
 第3章 逃避与回応:屈辱体験与“国民性”母題的生成、
 第4章 建構与消解:蘇俄体験与“蘇俄烏托邦”想像、
 結 語 走向世界的艱難、
 附録1:《日本雑事詩》:“新詞語”背後的旧意境、
 附録2:近現代域外遊記書目、
 主要参考文献、
 後 記




CHENPINGYUAN(陳平原)著、VICTOR PETERSEN訳 THE DEVELOPMENT OF CHINESE MARTIAL ARTS FICTION --A HISTORY OF WUXIA LITERATURE
CAMBRIDGE UNIVERSITY PRESS 2016


2016.10.26
 内容は以下のとおり。
 ============
 VICTOR PETERSEN, TRANSLATOR'S PREFACE,
 MICHAEL HOCKX, INTRODUCTION TO THE ENGLISH EDITION,
 INTRODUCTION: WUXIA NOVELS AND ME,
 1 THE XIAKE DREAM OF THE LITERATI THROUGH THE AGES,
 2 HAOXIA STORIES OF THE TANG AND SONG DYNASTIES,
 3 XIAYI NOVELS OF THE QING DYNASTY,
 4 TWENTIETH-CENTURY WUXIA NOVELS,
 5 CARRYING A SWORD AND DOING XIAKE DEEDS,
 6 SWEET REBENGE,
 7 FEELING SMUG IN TIANGHU,
 8 ROVING TO THE ENDS OF THE WORLD,
 9 WUXIA NOVELS AS A LITERARY GENRE,
 TRANSLATOR'S GLOSSARY,
 SELECT BIBLIOGRAPHY,
 INDEX




欧陽健『晩清新小説簡史』
台湾・秀威資訊科技股▲有限公司2015.10

2016.10.23
 内容は以下のとおり。
 ============
 韓ヨ「「秀威文哲叢書」総序」、
 一、晩清新小説的生成、
 二、新小説的発〓(1902-1903),
 三、新小説的第一個高峰(1903-1905),
 (1)《文明小史》、(2)《官場現形記》、(3)《二十年目睹之怪現状》、(4)《老残遊記》、(5)《〓海花》、(6)《癡人説夢記》、(7)《市声》、(8)《新石頭記》、(9)《洪秀全演義》,  四、新小説的第二個高峰(1906-1909),
 (1)立憲小説,(2)《新三国》、(3)《新水滸》、(4)《宦海潮》、《宦海昇沈録》、
 五、新小説的余波(1910-1911),
 後記。
 翻訳小説は含まない。参照:欧陽健『晩清小説史』杭州・浙江古籍出版社1997.6




沈素琴『中国現代文学期刊中的外国文論訳介及其影響:1915-1949』
北京語言大学出版社2015.6

2016.10.8
 内容は以下のとおり。
 ============
 前言、
 緒論、
 第1章 外国文論訳介綜述、
 第2章 俄蘇文論訳介、
 第3章 英国文論訳介、
 第4章 日本文論訳介、
 第5章 法国文論訳介、
 第6章 美国文論訳介、
 第7章 徳国文論訳介、
 第8章 其他欧亜諸国文論訳介、
 第9章 《中国現代文学期刊目録彙録》中的外国文論訳介綜述、
 第10章 中国現代文学期刊中外国文路訳介対中国現代文学与理論的影響、
 結束語 外国文論訳解影響下的中国現当代文論:得失与出路



おしらせ


2016.10.1
 予告が出た以下の書籍はいつ公開されるのか、とご質問をいただきました。
 興味をもっていただいてありがとうございます。

 清末小説二談
 漢訳アラビアン・ナイト論集 増補版
 清末翻訳小説論集 増補版
 林紓冤罪事件簿 統合増補版

 上記4種類の書籍は、現在本文の点検を続けています。
 本研究会ウェブサイトでの公開は、2017年1月を予定しています。しばらくお待ちください。

 なお、清末民初小説目録Xはすでに公開しています。これが最新版です。全部で約6千ページあります。工具書として役に立つでしょう。ご利用ください。





清末民初小説目録X
樽本照雄編 ファイル名 qmbookx2.pdf 約64.2MB


 目録Xを小規模に増補訂正しました。X2とする理由です。
 ダウンロードできます。




張天星『報刊与中国文学的近代転型(1833-1911)』
上海・復旦大学出版社2015.12 “中国近代文化転型与文学現代化”叢書

2016.9.9
 同一叢書で表紙は同一意匠のようです。内容は以下のとおり。
 ============
 欒梅健「“外部研究”何以可能――以中国近代文学的転型為例(代総序)」、
 緒言、
 第1章 報刊生産与文学生産機製的変革、
 第2章 報刊流通与文学伝播機製的変革、
 第3章 晩清報刊在域外文学訳介中的作用――以報載寓言為例(晩清報載伊索寓言伝播概況あり)、
 第4章 晩清報刊与晩清詩歌的近代化変革、
 第5章 報刊与晩清散文的近現代化変革――以報載遊戯文章為例、
 第6章 新聞輿論与晩清譴責小説的興起、
 第7章 報刊対晩清文学批評空間的拓展、
 第8章 新聞思想対晩清文学理論的浸染、
 参考文献、
 後記




宋声泉『民初作為方法――文学革命新論』
天津・南開大学出版2015.1 霊隠文叢

2016.9.20
 内容は以下のとおり。
 ============
 導論、
 第1章 消逝的界標:“民元”在文学史叙事中的百年浮沈、
 第2章 共和初肇:小説走向現代的制度性支持、
 第3章 返回起点:重構文学革命的“生成”、
 第4章 “運動”的由来:新文学合法性建立的再審視、
 結語、
 附録1:《新青年》第二、三巻所載与文学革命相関的文章、
 附録2:対“八不主義”的回応、
 参考文献、
 後記




李哲『『罵』与《新青年》批評話語的建構』
済南・山東文藝出版社2015.6 李怡、張中良主編『民国歴史文化与中国現代文学研究』叢書

2016.9.19
 内容は以下のとおり。
 ============
 李怡「総序之一:民国歴史文化与中国現代文学研究的新可能」、
 張仲良「総序之二:歴史還是現代文学学科拓展的有効途径」、
 李怡「代序:在与歴史的対話中建立我們的“大文学史”」、
 導論、
 第1章 “罵”与《新青年》言論姿態的確立、
 第2章 “文学革命”:“罵”与《新青年》的“文学批評”、
 第3章 “罵”与《新青年》的“文化批評”、
 第4章 “罵”“批評”与“文化保守主義”的言論困境、
 結語、
 参考文献、
 後記




陳明遠『文化人的経済生活』
上海・文匯出版2005.2/2007.6第二次印刷 文匯原創叢書

2016.9.17
 古い書籍です。最近入手しました。以下の文章を収録しています。
 ============
 啓蒙的起点:清末洋務学堂、
 清末四所大学的状況、
 商務印書館和文化人、
 20世紀上半葉的稿酬版税――出版社和作者的利益分成、
 五四前後北京文化人群体など




吾師侯官厳先生所訳希臘《伊朮寓言》有曰《鴉乗羊者》
『国聞報』光緒二十四年二月初一日(1898.2.21)

2016.9.17
 厳復(1854-1921)が漢訳したのは、主として社会科学系の著作です。トマス・ハクスリー(漢訳『天演論』)、アダム・スミス(漢訳『腹富』)、スペンサー(漢訳『群学斯言』)などであって小説とは関係がありません。
 ただし、彼がアラビアン・ナイトの一部について紹介していることは別の文章で触れたことがあります(樽本「天方夜譚小考」『漢訳アラビアン・ナイト論集(増補版)』2017所収)。
 といっても、ミル『論理学体系』を漢訳した『穆勒名学』の中でのことでした。英語原文にあるからそのままを翻訳したにすぎません。
 その彼がイソップ寓話を漢訳していたとは知らなかった。
 厳復漢訳イソップ寓言のばあいは、出現のしかたが少し複雑です。厳復の名前を冠して単独で発表されたわけではない。ましてや、単行本でもない。別人の文章の末尾に附録のようにして公表されました。イソップ寓話のなかのわずかに1話のみ。だからからか、漢訳イソップ寓話を説明する論文にも言及がないようです。
 胡福君、陳暉主編『中国現代文学編年史』第1巻1895-1905(北京・文化藝術出版社2015.8)が手がかりでした。
 王〓主編『厳復集』第1冊(北京・中華書局1986.1、78頁)を経て、『国聞報』の該当個所を複写で入手しました。上に掲げたとおりです。
 もとになったイソップ寓言は、“A SHEEP AND A CROW.”あるいは“THE JACKDAW AND THE SHEEP.”というものです。
 厳復がよった底本は、タウンゼンド本の“THE CROW AND THE SHEEP.”ではないように思います。

【2024.9.14馬文偉訂正】漢訳『腹富』→漢訳『原富』。漢訳『群学斯言』→漢訳『群學肄言』(本ウェブサイト2024.9.14「おしらせ」を参照)




王韜『西方思潮与中国近代文学』
上海・復旦大学出版社2015.12 “中国近代文化転型与文学現代化”叢書

2016.9.9
 内容は以下のとおり。
 ============
 欒梅健「“外部研究”何以可能――以中国近代文学的転型為例(代総序)」、
 導論、
 第1章 成為信仰的科学、
 第2章 成為普世価値的達爾文主義、
 第3章 群体啓蒙与個体啓蒙(老残遊記にふれる)、
 第4章 民族革命、詩、小説的羅曼斯、
 第5章 写実文学初伝中国(林訳小説と域外小説集にふれる)、
 結語、
 参考文献、
 後記





清末小説二談
樽本照雄著 本ウェブサイト公開予定


2016.9.6
 内容は以下のとおり。
 ============



目  次



1 茅盾の「童話」………………………………………………………………13
2 「老残遊記」紀行……………………………………………………………46
3 劉鉄雲死去の新聞報道……………………………………………………95
4 清末民初における定期刊行物の時空…………………………………97
5 電脳化資料庫日記…………………………………………………………119
6 電脳を利用した漢字文献整理…………………………………………124
7 清末民初小説の種類………………………………………………………144
8 「函髻記」をめぐって……………………………………………………166
9 『清末民初小説目録』の現在…………………………………………170
10 『清末民初小説目録』それから(初稿)…………………………177
11 劉鉄雲の写真をめぐって………………………………………………181
12 『清末民初小説目録』に「新編」とつける理由………………194
13 清末小説研究ガイド97序説…………………………………………196
14 阿英「晩清小説目」の構造……………………………………………215
15 阿英説「翻訳は創作より多い」は事実か…………………………251
16 小説目録の新暦旧暦問題………………………………………………259
17 阿英「晩清小説目」の新暦旧暦問題
   ――竺慶麟への反論をかねて………………………………………………267
18 小説雑誌の重版問題………………………………………………………276
19 「救劫伝」の作者艮廬居士は、胡思敬か…………………………307
 附:「救劫伝」第12-16回 325
20 『游戯報』の周樹人………………………………………………………358
21 呉趼人の手紙2通…………………………………………………………363
22 雑誌の黄帝紀年――新暦旧暦問題………………………………………368
23 「李伯元と劉鉄雲の盗用事件」の謎を解く………………………385
 附:『繍像小説』刊行一覧(論文47と同一) 396
24 研究雑誌の最先端――『清末小説』など………………………………399
25 『清末小説研究論』を語る……………………………………………404
26 中国の研究者と討論をする
  ――『清末小説研究集稿』に関連して………………………………………409
27 『清末小説研究集稿』日本語前言と後記…………………………418
28 潘建国「近代小説的研究現状与学術空間」を読む……………422
29 出版社の図書目録…………………………………………………………428
30 林訳シェイクスピア冤罪事件(要旨)……………………………443
31 樽本論文補遺3題…………………………………………………………445
32 中国翻訳家 冤罪一百年………………………………………………449
33 『繍像小説』研究の現在………………………………………………451
34 「官場現形記」裁判の真相
  ――日本を装った海賊版………………………………………………………462
35 『劉鶚集』はよろしい……………………………………………………486
36 「老残遊記」執筆経過の謎
  ――書簡集『滬榕書札』に見る………………………………………………506
37 『繍像小説』問題…………………………………………………………536
38 『清末民初翻訳短篇ミステリ論集』序………………………………547
39 小説目録はたのしい
  ――『清末民初小説版本経眼録』紹介………………………………………551
40 夏瑞芳暗殺事件の犯人……………………………………………………565
41 小説目録に見る『繍像小説』の刊行年月日………………………571
42 清末小説目録の最新成果(初稿)
  ――劉永文編『晩清小説目録』について……………………………………577
43 『清末民初小説目録』第4版問答……………………………………589
44 貴重な出版史料のひとつ
  ――『繍像小説』主編を示す商務印書館の新聞広告………………………619
45 李伯元研究で留意すべきいくつかの要点
  ――陸克寒、譚坤著『李伯元評伝』について………………………………624
46 アメリカ人宣教師の暦……………………………………………………639
47 『繍像小説』発行遅延について
  ――王文君氏へ…………………………………………………………………649
 附:『繍像小説』刊行一覧(論文23と同一) 661
48 中国近代小説年表の最新成果(初稿)
  ――陳大康『中国近代小説編年史』について………………………………664
49 注目点4:『官場現形記』の海賊版…………………………………677
50 上海のシャーロック・ホームズ(初稿)…………………………691




王文君「再議《繍像小説》的停刊時間――読《申報》刊《繍像小説》広告札記」
『中国海洋大学学報(社会科学版)』2016年第2期 2016.3.10

2016.9.4
 王文君「再議《繍像小説》的停刊時間――読《申報》刊《繍像小説》広告札記」(『中国海洋大学学報(社会科学版)』2016年第2期 2016.3.10)が発表されています。
 王文君は、『申報』に掲載された商務印書館広告および受贈書籍への謝辞を丹念に採取しました。その目的は『繍像小説』の発行が遅延していたことを証明するためです。
 王文君の結論。その停刊時間は、阿英、畢樹棠が断言した光緒三十二年(1906)三月ではない。「1907年1月30日」が上限だ。旧暦で表記すれば「光緒三十二年十二月十七日」です。
 その結論は、すでに私が指摘しております。私のばあいは、日にちの確定はできないと考えていますから、光緒三十二年年末と書きました。
 王文君論文には樽本の名前が出てきます。以前の論文とも関係がありますので、問題になる2点を箇条書きにして説明します。

 1 畢樹棠は、『繍像小説』の停刊時期を「停刊於光緒三十二年(丙午)三月」と書いている(124頁)。
 間違い。畢樹棠の文章は、魏紹昌によって書き換えられています。以下に対照させます。初出と魏紹昌編『李伯元研究資料』の該当部分です。

  『文学』初出 停刊年月不明、約在光緒三十二三年之間(270頁)
  魏紹昌編所収 停刊於光緒三十二年(丙午)三月(462頁)

 魏紹昌は、資料の無断改竄をやりました。研究者が行なってはならない反則行為です。
 畢樹棠は、「たぶん光緒三十二年から三十三年のあいだだろう」と厳密に推測しました。
 王文君は、論文の初出を確認せずに魏紹昌の改変した論文を引用したのです。
 魏紹昌の反則については、樽本「『繍像小説』の重版」(『清末小説から』第57号 2000.4.1)、「『繍像小説』研究の現在」(『清末小説から』第89号 2008.4.1)などに重ねて指摘し公表しています。

 2 『申報』受贈書籍記事1905年3月11日には南亭亭長が『繍像小説』の主編だと明記している。1907年8月17日『神州日報』の商務印書館広告よりも早い(125頁)。
 間違い。光緒三十一年二月初六に見える受贈書籍記事には、『繍像小説』25-29冊を受け取ったとあります。そのなかで「南亭亭長之有功於世偉矣哉」とあるのだそうです。これは、主編が南亭亭長であるという意味ではありません。単に南亭亭長作品がすばらしい、といっているだけ。王文君の勘違いです。証拠にはなりません。

 王文君論文では、樽本論文を引用していますがすべて『清末小説研究集稿』(2006)所収のものです。古すぎます。
 王文君は私が何度も『繍像小説』の発行遅延を問題にしていることを知っているはず。それらを含めて論じる必要があるでしょう。
 王文君「就《申報》刊《繍像小説》廣告――與樽本照雄先生商〓」(『清末小説から』第114号 2014.7.1)に対して私が反論した「王文君氏へ」に触れません。古い一覧表ではなく、同誌に掲載した新しい「『繍像小説』刊行一覧」を無視したのはいかがなものか。
 私が行なった反論と問題の提起に対して知らん顔をしています。
 李伯元は、みずから肺病宣言をしました(私は反論の中で『世界繁華報』二月十五日付を引用しました)。その後の光緒三十二年三月十四日(1906.4.7)に李伯元は死去した。ところがそれ以後も『繍像小説』は発行継続されているのです。するとそれに掲載されている南亭亭長「文明小史」の南亭は誰なのか。「老残遊記」と「文明小史」の盗用問題がからんできます。
 以前の文章で私は王文君に対して「『申報』以外の新聞に目を配り、以上の問題が存在することを視野に入れて、精密詳細な調査を続行してほしい」と希望しておきました。
 ところが、今回の論文は『繍像小説』の停刊時間のみに問題を絞り込んで終わりです。それでは、後退したといわざるをえません。研究の広がりと前進を自ら拒否したことになるでしょう。
 将来のある若い研究者ですから、私は今後の研究に期待をしています。じっくりと腰を落ち着け視野を広くして研究を継続されることを願っています。




欒梅健、張霞『近代出版与文学的現代化』
上海・復旦大学出版社2015.12 “中国近代文化転型与文学現代化”叢書

2016.8.25
 内容は以下のとおり。
 ============
 欒梅健「“外部研究”何以可能――以中国近代文学的転型為例(代総序)」、
 緒論、
 ●上編 伝統出版業的式微与文学出版、
 第1章 伝統出版格局下的文学出版、
 第2章 小説、戯曲的伝播与晩清禁書政策、
 ●中編 辛亥革命前的新式出版業与文学出版、
 第1章 政府主持与民間提倡下的新式出版、
 第2章 新式出版技術伝入与文学出版、
 第3章 翻訳小説的出版盛況、
 第4章 創作小説与出版的互動、
 ●下編 1912年至1919年間的出版業与文学出版、
 第1章 民初書局与文学出版、
 第2章 文学雑誌的繁栄与文学発展、
 結語、
 附録1:辛亥革命与中国文学的現代性転型、
 附録2:重論中国現代文学中現実主義的起源及其特徴――従近、現代社会与文化的転型出発、
 附録3:近代主要出版機構簡介、
 附録4:1919年前林紓小説及商務印書館、中華書局小説出版書目、
 参考文献、
 後記



2016.8.19

 『清末小説から』第123号を掲げました。
   林訳『伊索寓言』の底本(上)――挿絵の謎を解く………沢本郁馬
 〈女檮〓〉罕見林譯研究資料………古二コ
 漢訳ラム『シェイクスピア物語』の序 3――「区別がつかない論」再び………樽本照雄





何宏玲『晩清上海文藝報紙与近代文学変革』
北京・人民出版社2016.3 随園文史研究論叢

2016.8.12
 内容は以下のとおり。
 ============
 緒論、
 第1章 《申報》的詩歌刊載、
 第2章 《字林滬報》的詩歌刊載、
 第3章 現代都市中的新型通俗読物、
 第4章 小報中的新体散文、
 第5章 小説入報、
 第6章 現代伝播、都市風尚与《海上繁華夢》、
 第7章 《海天鴻雪記》的人物与情感、
 第8章 譴責小説的小報語境、
 結語、
 参考文献、
 後記




陶春軍『中国近現代通俗文学期刊風格研究――以《礼拝六》《小説月報》(1910-1920)《小説世界》為例』
南京大学出版社2015.12

2016.8.3
 内容は以下のとおり。
 ============
 湯哲声「序」、
 緒論、
 第1章 清末民初上海経済、社会、文化基礎与通俗文学期刊出現、
 第2章 俗中之雅:《礼拝六》“才子”期刊風格、
 第3章 雅中之俗:《小説月報》“君子”期刊風格、
 第4章 雅俗合算:《小説世界》“市場”期刊風格、
 結語、
 附録:深入問題探討,関注平行研究――范伯群先生訪談録、
 附表1 申報所登《礼拝六》広告目録、
 附表2 《礼拝六》(1-100期)前一百期分類小説(除写情小説)統計表、
 附表3 《礼拝六》周痩鵑著、訳一覧表、
 附表4 《小説月報》登載之主要弾詞及弾詞考釈、
 附表5 小説月報(1910-1920)封面説明、
 附表6 主要参考的期刊、報紙、
 参考文献、
 後記




張〓子『歌舞春秋』
1951.7影印本


2016.7.27
 張厚載の著書です。題字は梅蘭芳。表紙は梅蘭芳の舞台写真だそうです。
 上海・広益書局とあります。これは「総経售」。「出版」は張〓子ですから日本でいう私家版でしょう。
 張厚載の観劇記録を集めたもの。上編は1916-1924年の北京、下編は1929-1935年の天津での観劇となっています。
 下は梅蘭芳の著作で張厚載あての署名があるので掲げました。ネットからの引用です。



2016.7.26
 『清末小説から』第123号(2016.10.1予定)の目次は以下のとおりです。
 ========================
 林訳『伊索寓言』の底本(上)――挿絵の謎を解く………沢本郁馬
 〈女檮〓〉罕見林譯研究資料………古二コ
 漢訳ラム『シェイクスピア物語』の序 3――「区別がつかない論」再び………樽本照雄




潘建国『物質技術視閾中的文学景観:近代出版与小説研究』
北京大学出版社2016.3 文学史研究叢書


2016.7.20
 論文集。以下を収録。
 ============
 清代後期上海地区印刷文化的輸入与輸出、
 档案所見1906年上海地区的書局与書荘、
 晩清上海五彩石印考、
 清末上海地区的書局与晩清小説、
 鉛石印刷術与清通俗小説的近代伝播――以上海(1874-1911)為考察中心、
 近代海上画家与通俗小説図像的絵制、
 晩清時期小説徴文活動考論、
 民国時期上海地区偵探小説期刊述略、
 清末民初文人的小説閲読与研究――以常熟徐兆〓為学術個案、
 近代小説的研究現状与学術空間
 など



李欧梵、季進選編『海外晩清文学研究文選(英文)』
上海・復旦大学出版社2016.3 蘇州大学海外漢学研究叢書


 英文論文集。内容は以下のとおり。
 ============
 1. C. T. Hxia:“Hsv Chen-ya's Yv-li hun: An Essay in Literary History and Criticism”,
 2. Jianhua Chen:“Formation of Modern Subjectivity and essay: Zhou Shoujuan's “In the Nine-Flower Curtain””,
 3. Leo OU-fan Lee and Andrew J. Nathan: “The Beginnings of Mass Culture: Journalism and Fiction in the Late Chi'ng and Beyond”,
 4. David Der-wei Wang: “Edifying Depravity: The Courtesan Novel”,
 5. Milena Dolezelova-Velingerova:“Narrative Modes in Late Qing Novels”,
 6. Patrick Hanan:“The Second Stage of Vernacular Translation”,
 7. Theodore Hunters:“New Ways of Writing”,
 8. Alexander des Forges: “Synchronized Reading: Installment Aesthetics and the Formation of the Mediasphere”,
 編後記(漢語)





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   初版奥付                 『侠女奴』初版表紙

  再版 ×正しくない奥付           『侠女奴』再版表紙

   再版 ○正しい奥付


2016.7.17
 周作人が漢訳した『侠女奴』の初版と再版の影印本です。
 アリ・ババといえば誰でも理解するでしょう。
 上の2種類を影印本で入手しました。
 影印本を作成した会社が違うらしい。初版表紙はカラーで表示されていたのですが実際は白黒でした。ウェブサイトから複写をして修正しています。
 問題は、再版本の奥付です。発行は小説林総発行所のはずです。しかし、まったく異なる文盛堂書局の奥付になっている。
 何かの手違いで紛れ込んだようです。影印本であるからといって信用してはなりません。
 再版本の正しい奥付をかかげておきます。




林訳『伊索寓言』十八版 表紙

本文

奥付 1922.3十八版(架蔵)


2016.6.29
 林訳『伊索寓言』の底本はみつからない、とヒル MICAEL GIBBS HILL は断言しています(2007)。
 林訳に収録された挿絵と一致する英訳本が存在しないという意味です。
 しかし、底本のない漢訳は存在するはずがないのです。
 漢訳本文とその挿絵という大きな手がかりがあるにもかかわらず、今までの研究者は誰も気づかなかったらしい。
 追究すると興味深い事実が見つかるのでした。





漢訳アラビアン・ナイト論集 増補版
樽本照雄著 本ウェブサイト公開予定


2016.6.29
 内容は以下のとおり。
 ============



目  次



1 漢訳アラビアン・ナイト………………………………………………… 7
2 周作人漢訳アリ・ババ「侠女奴」物語……………………………134
3 周作人漢訳アリ・ババ「侠女奴」の英文原本……………………229
4 周作人漢訳アリ・ババの原本を求めて……………………………249
5 「童話」の漢訳アラビアン・ナイト………………………………260
6 「天方夜譚」小考…………………………………………………………283
7 中国における「アラビアン・ナイト」……………………………302
8 『漢訳アラビアン・ナイト論集』
  ――清末翻訳小説研究が進まない理由………………………………………305
9 中国におけるアラビアン・ナイト……………………………………309
10 附録:漢訳アラビアン・ナイト目録…………………………………329

 あとがき 339
 増補版あとがき 342




樽本照雄2007                宋声泉2016

2016.6.27
 宋声泉「《侠女奴》与周作人新体白話経験的生成」(『中国現代文学研究叢刊』2016年第5期(総第202期)2016.5.15)が発表されています。
 表題のとおり周作人『侠女奴』のよった英語底本を特定したのちに作人の翻訳方法を検討する内容です。
 最初に従来の研究を総括して次のようにいう。
 「ごく少ない学者が『侠女奴』について緻密な研究を行なっているほかは@、主要には訳本の「小序」と周作人の後の記述に依拠した成果があるだけで、訳本自体に対する探究は不足しており……」(121頁)
 ここにつけられた注1は「@[日]樽本照雄「周作人漢訳アリ・ババ『侠女奴』物語」、『清末小説』第26、27号,2003年、2004年」(133頁)です。それだけ。
 樽本「周作人漢訳アリ・ババ「侠女奴」の英文原本」(『清末小説』第30号 2007.12.1)がありません。
 宋声泉は、1904年以前の英文『アラビアン・ナイト』を100部近く閲覧した結果、ラウトリッジ社本が周作人の回想と最も合致することを発見したという(上記写真を参照)。これはなにでしょうか。
 周作人が底本にしたのは、フォースター版ラウトレッジ社本であることを私はようやく突きとめました。それが前出「周作人漢訳アリ・ババ「侠女奴」の英文原本」です。
 宋声泉論文に肝心の、しかもすでに読んでいる樽本「周作人漢訳アリ・ババ「侠女奴」の英文原本」に言及していないことに違和感を抱いたのです。先行文献を無視するのは、よくありません。





清末翻訳小説論集 増補版
樽本照雄著 本ウェブサイト公開予定


2016.6.25
 内容は以下のとおり。
 ============



目  次



1 「航海少年」は魯迅の翻訳か……………………………………………15
2 魯迅「斯巴達之魂」について……………………………………………20
3 魯迅「造人術」の原作…………………………………………………… 39
4 魯迅「造人術」の原作・補遺
  ――英文原作の秘密……………………………………………………………58
5 漢訳ドイル「荒磯」物語
  ――山縣五十雄、周作人、劉延陵らの訳業………………………………… 71
6 漢訳ドイル「サノックス卿夫人事件」3種
   ――李常覚、包天笑+張毅漢、周痩鵑らの訳業……………………………96
7 漢訳ドイル医者物語
  ――包天笑+張毅漢、周痩鵑らの訳業………………………………………115
8 贋作ホームズ失敗物語
  ――陳景韓、包天笑から劉半農、陳小蝶へ…………………………………224
9 贋作ホームズ
  ――『黄金骨』の場合…………………………………………………………261
10 清末翻訳2題………………………………………………………………274
11 ゴールドスミス最初の漢訳小説………………………………………279
12 包天笑翻訳原本を探求する……………………………………………297
13 「航海少年」原作探索……………………………………………………313
14 トルストイ最初の漢訳小説
  ――「枕戈記」について………………………………………………………323
15 ポー最初の漢訳小説
  ――周作人訳『玉虫縁』について……………………………………………335
16 漢訳ハガード小考…………………………………………………………367
17 アディスンの漢訳小説……………………………………………………404

増 補─────────────────────────────────

18 清末民初の翻訳小説
  ――付:日本語経由の欧米漢訳小説一覧……………………………………413
19 『漢訳東西洋文学作品編目』とその編者…………………………468
20 英訳「老残遊記」…………………………………………………………478
21 『漢訳ホームズ論集』
  ――清末翻訳小説研究が進まない理由2……………………………………515
22 最初の漢訳「ドン・キホーテ」………………………………………519
23 セルバンテス最初の漢訳小説
  ――『谷間鶯』について………………………………………………………527
24 清末民初の翻訳小説と日本……………………………………………545
25 曾孟樸の初期翻訳…………………………………………………………558
26 書家としての呉檮…………………………………………………………646
27 呉檮の漢訳チェーホフ……………………………………………………693
28 呉檮の漢訳ゴーリキー……………………………………………………716
29 陳大康『中国近代小説編年史』から………………………………734
30 ユゴーの漢訳名囂俄について…………………………………………743
31 翻訳家奚若……………………………………………………………………771
32 マティーアと『釦子記』………………………………………………798
33 早期漢訳ドーデ「最後の授業」………………………………………817
34 周作人漢訳ヨーカイ・モール
  ――『匈奴奇士録』の英訳底本について……………………………………924
35 原作の探索
  ――「夢遊二十一世紀」を例にして…………………………………………952
36 「綺羅沙夫人」の原作……………………………………………………966
37 漢訳『奇獄』の謎…………………………………………………………972
38 日本語訳『海上大冒険談』の底本…………………………………1029
39 孫毓修『伊索寓言演義』の底本……………………………………1042
40 林訳『伊索寓言』の底本
  ――挿絵の謎を解く…………………………………………………………1054
41 清末翻訳小説雑考
  ――いくたびかの阿英目録(選)……………………………………………1129
42 梁啓超の種本
  ――雑誌『太陽』のばあい……………………………………………………1194

   あとがき1209
   増補版あとがき 1213




劉勇、李怡総主編『中国現代文学編年史』第1-3巻
北京・文化藝術出版社 第1巻2015.8、第2巻2015.11、第3巻2015.8

2016.6.11
 以下のような構成になっています。
 各巻巻頭に劉勇、李怡「総序:中国現代文学編年史的理論価値和実践意義」。
 第1巻(1895-1905)胡福君、陳暉主編、胡福君、林分▲「本巻導言:清末民初的文学」。
 第2巻(1906-1915)林分▲、黄育聡主編、「本巻導言」は第1巻と同文。
 第3巻(1915-1919)劉勇、李春雨主編、劉勇、李春雨「本巻導言:第一個十年的文学」。




陳麗菲主編『上海近現代出版文化変遷個案研究』
上海辞書出版社2016.3

2016.6.10
 以下の論文を収録しています。
 ============
 陳沛雪「20世紀30年代上海図書出版人力資源研究」、
 趙〓紅「民初女性伝媒構建的上海女性及生活導向――以《婦女時報》為中心」




樽本照雄『林紓冤罪事件簿(統合増補版)』
本ウェブサイト公開予定

2016.6.5
 『林紓冤罪事件簿』と『林紓研究論集』を統合し、いくつかの関連論文を増補したものです。
 内容は以下のとおり。
 ============

林紓冤罪事件簿−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 まえがき 5

1 林紓を罵る快楽……………………………………………………………… 19
2 林訳シェイクスピア冤罪事件………………………………………… 196
3 林訳イプセン冤罪事件…………………………………………………… 267
4 林訳スペンサー冤罪事件………………………………………………… 286
5 林訳セルバンテス冤罪事件…………………………………………… 299
6 林訳小説冤罪事件の原点
  ――鄭振鐸「林琴南先生」について……………………………………… 340
7 魯迅による林紓冤罪事件
  ――「引車売漿者流」をめぐって………………………………………… 359
8 魯迅「出乎意表之外」の意表外……………………………………… 386
9 林訳小説評価の最近
  ――ある不安な新展開……………………………………………………… 395

林紓研究論集−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

10 阿英による林紓冤罪事件
  ――『吟辺燕語』序をめぐって…………………………………………… 402
11 林訳「ハムレット」
  ――『吟辺燕語』から……………………………………………………… 436
12 ラム版『シェイクスピア物語』最初の漢訳と林訳
  ――「十二夜」を中心に……………………………………………………… 449
13 林訳シェイクスピア
  ――クイラー=クーチ版「ジュリアス・シーザー」……………………… 477
14 林訳チョーサー…………………………………………………………… 499
15 林訳ユゴー………………………………………………………………… 519
16 中国現代文学史における林紓の位置……………………………… 545
17 林紓落魄伝説……………………………………………………………… 669
18 陳独秀の北京大学罷免
  ――『林紓冤罪事件簿』補遺……………………………………………… 692
19 周作人が魯迅を回想して林紓に言及する
  ――日本語訳注釈について…………………………………………………… 743
20 『林紓冤罪事件簿』ができるまで
  ――あるいは発想と研究方法について……………………………………… 755

増 補−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
21 施蟄存による林紓冤罪事件…………………………………………… 793
22 『吟辺燕語』批判の謎………………………………………………… 800
23 蔡元培を中傷した北京大学元教員………………………………… 815
24 「林訳小説叢書」の作品数…………………………………………… 820
25 瀬戸宏報告を評する
  ――「林紓のシェイクスピア観――林紓は冤罪か」について………… 829
26 中国のシェイクスピア最新成果…………………………………… 841
27 漢訳ラム『シェイクスピア物語』の序
  ――「区別がつかない論」再び……………………………………………… 847

 林紓冤罪事件簿あとがき 930
 林紓研究論集あとがき 937
 統合増補版あとがき 943





許軍『清末民初社会転型与時事小説創作流変』
上海大学出版社2016.2

2016.5.27
 内容は以下のとおり。
 ============
 第1章 緒論、
 第2章 社会転型与時事小説的初起、
 第3章 社会転型与時事小説的発展、
 第4章 社会転型与時事小説的深入、
 結語、
 参考文献、
 附録:清末民初時事小説作品列表、
 致謝




宋莉華『近代来華伝教士与児童文学的訳介』
上海古籍出版社2015.11 中西文学文化関係研究叢書

2016.5.16
 内容は以下のとおり。
 ============
 緒論、
 第1章 児童福音故事、
 第2章 基督教成長小説、
 第3章 作為児童文学的文学経典、
 第4章 19世紀的児童文学経典、
 第5章 寓言、
 第6章 民間故事、
 第7章 自然神学与博物学影響下的動物小説訳介、
 結論




顧艶『林紓伝――訳界奇人』
北京・作家出版社2016.1

2016.5.6
 内容は以下のとおり。
 ============
 引言 林紓――多彩多姿的一生、
 第1章 寒門中的童年(1852-1866)、
 第2章 別処一個世界(1867-1869)、
 第3章 貧病交迫(1870-1873)、
 第4章 初為人父(1874-1876)、
 第5章 義侠狂人中挙(1877-1882)、
 第6章 礼部不第(1883-1893)、
 第7章 維新思想和詩歌(1874-1898)、
 第8章 客居杭州(1899-1901)、
 第9章 希望之郷(1902-1908)、
 第10章 巨変与驚恐(1909-1911)、
 第11章 共和之局(1912-1913)、
 第12章 耆旧与遺老(1914-1915)、
 第13章 宣南煙雲楼(1916-1917)、
 第14章 遭遇人生滑鉄盧(1918-1919)、
 第15章 孤寂者的超然(1920-1921)、
 第16章 好名之心(1922-1923)、
 第17章 終結与肇始(1924)、
 尾声、
 附録1:林紓年表、
 附録2:主要参考文献、
 後記 林紓:一個孤寂的老人



2016.5.5

樽本照雄『商務印書館研究論集(増補版)』
ファイル名 cp2.pdf 約20.9MB

 次の場所に置いています。どちらも同じものです。
https://drive.google.com/file/d/0B9fUzbPLw-_semFNS0VxVVJSaDA/view?usp=sharing
https://onedrive.live.com/redir?resid=EA5DFFD590AA8F68!7662&authkey=!AHDrpnQc_NMtPQc&ithint=folder%2cpdf

ダウンロードできます。




電字版
樽本照雄『商務印書館研究論集(増補版)』
清末小説研究会2016 近刊 ウェブ公開予定

2016.5.4
 初版は2006年。今回、論文6本を追加して「増補版」です。
 本研究会に掲げましたらお知らせします。




瀬戸宏『中国のシェイクスピア』
松本工房2016.2.29

2016.5.2
 本日入手した該書にはつぎの文章を収録しています。
 第2章 林紓のシェイクスピア観 85-110頁



2016.4.24

樽本照雄『初期商務印書館研究(増補版)』
 The Commercial Press of Early Date (expanded edition)
 ファイル名 cp3.pdf 約25MB

 次の場所に置いています。どちらも同じものです。
1 https://drive.google.com/folderview?id=0B9fUzbPLw-_sT3ZnUFljVnJRbFE&usp=sharing
2 https://onedrive.live.com/redir?resid=EA5DFFD590AA8F68!7664&authkey=!AJKeFJ3XplvFoJQ&ithint=file%2cpdf

ダウンロードできます。




電字版
樽本照雄『初期商務印書館研究(増補版)』
清末小説研究会2016 近刊 ウェブ公開予定

2016.4.21
 『初期商務印書館研究(増補版)』の刊行は2004年でした。
 現在、電字版を公開するための作業を進めています。
 内容は以下のとおり。
 ============

目  次


   まえがき……………………………………………………………………… 3


第1章 商務印書館
 1 商務印書館の創業…………………………………………………………… 15
   夏瑞芳/8人の出資者/出資者7人説/創業者たちとキリスト教
   /夏瑞芳という人
 2 初期印刷物…………………………………………………………………… 27
 3 漢訳『新島襄伝』について………………………………………………… 33
   漢訳『新島襄伝』/漢訳『新島襄伝』の内容
 4 商務印書館とキリスト教会………………………………………………… 40
 5 美華書館……………………………………………………………………… 42
 6 英語教科書…………………………………………………………………… 45
   『華英初階』のこと/『華英初階』の内容
 7 新式学堂の設立……………………………………………………………… 60
 8 張元済の保証………………………………………………………………… 60
   翻訳原稿の失敗
 9 教科書の系譜………………………………………………………………… 62
   日本語教科書(その1)/坪内逍遥の教科書/沙張訳本/『絵図
   文学初階』
 10 修文書館買収………………………………………………………………… 78
 11 経営不振をめぐる謎………………………………………………………… 81
 12 第1次増資をめぐる謎……………………………………………………… 84
 13 張元済が正式に入館するまで……………………………………………… 88
 14 編訳所………………………………………………………………………… 89
 15 火災発生……………………………………………………………………… 93
   出火情況/火災保険
 16 印刷所の設立………………………………………………………………… 102
 17 印刷所の謎…………………………………………………………………… 105
 18 発行所の設立………………………………………………………………… 107

第2章 金港堂
 1 永沢金港堂…………………………………………………………………… 113
 2 金港堂の創設者原亮三郎…………………………………………………… 114
 3 金港堂と高等師範学校――三宅米吉を例として………………………… 116
 4 金港堂の方向転換…………………………………………………………… 119
 5 雨山長尾槙太郎……………………………………………………………… 121
   長尾雨山と鄭孝胥/鄭孝胥のこと/鄭孝胥の日記/日記の中の長
   尾雨山――日清戦争まで
 6 教科書疑獄事件……………………………………………………………… 131
   教科書の採択/教科書採択をめぐる醜聞/教科書疑獄事件の発生
 7 長尾雨山と教科書疑獄事件………………………………………………… 138
   新聞に見る長尾雨山らの裁判/高津鍬三郎の場合
 8 長尾雨山は冤罪である……………………………………………………… 145
   小谷重の場合
 9 上海で報道された日本教科書疑獄事件…………………………………… 148
 10 長尾正和の雨山伝…………………………………………………………… 150
   上海以前/上海行/子女から見た父雨山/長尾雨山の「暗部」
 11 原安三郎からの手紙………………………………………………………… 158
 12 金港堂の中国大陸進出計画………………………………………………… 160
   その動機/その時期
 13 金港堂から商務印書館への投資…………………………………………… 164
   原亮三郎と中国大陸−商務印書館
 14 山本条太郎…………………………………………………………………… 167
   山本条太郎という人/三井物産上海支店長/上海紡織有限公司/
   商務印書館/印錫璋

第3章 日中合弁
 1 合弁の経緯について(誤解その1)……………………………………… 185
 2 創業者高翰卿の証言………………………………………………………… 187
 3 合弁にいたる経緯、その構造……………………………………………… 189
   合弁の推進者/合弁の条件/5万元の捻出
 4 合弁と教科書事件の関係について(誤解その2)……………………… 194
 5 合弁の事実を隠したがる商務印書館……………………………………… 196
   商務印書館の理由
 6 夏瑞芳の才覚と合弁効果…………………………………………………… 208
 7 『最新国文教科書』そのほか……………………………………………… 212
   蒋維喬日記から/教育課程試案/教科/編制/中国の教育課程
   /『最新国文教科書』第1冊
 8 上海における雨山…………………………………………………………… 253
   長尾雨山の漢語論文その他/雨山の訳書/長尾雨山の教科書―
   ―日本語教科書(その2)/時代の反映/日中合弁/翻訳/商務
   印書館の初期刊行物
 9 鄭孝胥と長尾雨山…………………………………………………………… 271
   長尾雨山と再会する/預備立憲公会など
 10 ライバル(その1)――中国図書公司の場合…………………………… 274
   中国図書公司の出現/章錫?論文/外交史料/『支那経済全書』
   /利権回収――その内容/「中国図書有限公司縁起」/「縁起」
   /「招股章程」/発起人/その後/席子佩/『申報』/席子佩
   (裕福)の登場/席子佩にとっての中国図書有限公司
 11 日本人理事の排除…………………………………………………………… 305
   社長と理事会
 12 鄭孝胥と商務印書館、理事会……………………………………………… 306
   商務印書館株主/商務印書館理事会
 13 ゴム投機……………………………………………………………………… 309
 14 張元済、攻撃される………………………………………………………… 316
 15 ライバル(その2)――中華書局との教科書戦争……………………… 318
   陸費逵と商務印書館/中華書局創立まで/陸費逵の秘密行動1/
   夏瑞芳の場合/張元済の場合/陸費逵の秘密行動α/秘密行動の
   謎/もうひとつの秘密行動――つぶされた教科書改革/中華書局
   創立後/高夢旦の場合/『教育雑誌』のチグハグさ/陸費逵の商
   務印書館辞職/中華書局側の記録/『申報』紙上の教科書戦争/
   /「共和国教科書」/背景としての学制改革/実録教科書戦争
 16 商務印書館が日本資本回収を決断する…………………………………… 354
   商務印書館の精神的苦しみ
 17 合弁解消の経緯……………………………………………………………… 356
   民国の商務印書館理事会/日本人持ち株の回収/金港堂の事情
 18 株と資産の評価……………………………………………………………… 363
   日本資本回収/商務印書館理事会の完全勝利宣言
 19 増加する資本金とあがる利益……………………………………………… 368
   資本金/日本籍投資者名単/夏瑞芳の商務印書館
 20 合弁の総決算………………………………………………………………… 373
 21 合弁解消の公表……………………………………………………………… 375
 22 夏瑞芳暗殺…………………………………………………………………… 380
 23 長尾雨山の帰国……………………………………………………………… 386
   長崎到着

第4章 初期商務印書館の精神分析
 1 合弁記述の簡素化あるいは軽視…………………………………………… 395
 2 被害者意識…………………………………………………………………… 399
 3 人事権………………………………………………………………………… 403
 4 変化しつつある商務印書館研究の現在…………………………………… 406
 5 事実と意識――心の傷は癒されない……………………………………… 412

附 録
  1 民國三年一月三十一日非常股東大會董事會報告……………………… 417
  2 商務印書館『最新国文教科書』第1冊本文…………………………… 419
  3 最近の商務印書館研究に見る日中合弁の事実………………………… 426
  4 初期商務印書館年表……………………………………………………… 471
  5 文献一覧…………………………………………………………………… 478

   初版あとがき 519
   増補版あとがき 527

   索  引 532

   地図上の@◆江西路北京路首徳昌里末〓三号 23
   地図上のA◆北京路慶順里口美華書館西首 41
   地図上のB◆長康里で編訳所の設立準備 89
   地図上のC◆銭業会館西文昌閣隔壁 102
   地図上のD◆唐家〓 107
   地図上のE◆冠生園北隣171、173番地 107
   地図上のF◆河南路棋盤街直街中市 110
   地図上のG◆蓬路 110
   地図上のH◆美租界新衙門東首祥麟里間壁成字一三六四号 294
   地図上のI◆閘北宝山路 296
   地図上のJ◆四馬路晝錦里口 304




 『清末小説から』第122号(2016.7.1予定)の目次は以下のとおりです。
 ========================
 いくたびかの阿英目録14………樽本照雄
 漢訳ラム『シェイクスピア物語』の序 2――「区別がつかない論」再び………樽本照雄
 漢訳『奇獄』の謎 4完――結論検証篇(下)………沢本香子
 也説林訳伊索寓言的原本何在………蘇 建新
 孫毓修『伊索寓言演義』の底本………沢本郁馬
 論商務印書館対林訳小説的重要作用………江  曙




李欧梵講演 季進編『未完成的現代性』
北京大学出版社2005.6/2006.10第2次印刷 北大学術講演叢書20

2016.4.13
 以下の文章を収録しています。
 「晩清文化、文学与現代性」、「福爾摩斯在中国」




孫毓修訳『伊索寓言演義』
上海・商務印書館 刊年不記 影印本(1915)

2016.4.12
 漢訳作品研究の基本は、まず底本を特定することです。
 原作がわかっていても底本までみつけることが困難なものがあります。アラビアン・ナイトとイソップ寓話ですね。
 漢訳イソップ寓話の底本を確定している研究者は多くありません。不明のまま論文を書いて、どこかの「原文」と漢訳本文を比較検討するのを見ると痛ましい感じがします。事実だと書くのもいかがか。
 孫毓修訳『伊索寓言演義』の底本については、日本人が特定しています。特別に貴重ですし心強い。
 内田慶市「4.孫毓修の『伊索寓言演義』(1915)及びその他」(『近代における東西言語文化接触の研究』関西大学出版部2001.10.25 関西大学東西学術研究所研究叢刊17)です。
 それによると、底本は Aesop's Fables: A new version, chiefly from original sources, by The Rev. Thomas Jamese, M. A., with more than one hundred illustrations designed by John Tenniel. (London: John Murray, Albemarle Street., 1848、ハーバード大学図書館蔵)だそうです。





『華英進階全集』
上海・商務印書館1904

2016.4.5
 『華英進階全集』(入門、初集から5集まで。上海・商務印書館1904、アメリカ印刷の影印本、2016.4.5購入)です。
 創業間もない上海・商務印書館が出版業へ転身する契機となった英語教科書のひとつだと知られています。  『華英初階』が入門書として編集刊行されました。『華英進階』は後継の読本という位置づけです。
 まさか全集が、しかもアメリカで影印されているとは思いもしません。
 商務印書館研究には欠かすことのできない書籍だと考えます。




付登舟『清末民初武漢報刊研究』
武漢出版社2015.5

2016.4.2
 内容は以下のとおり。
 ============
 第1章 清末民初武漢報刊概観、
 第2章 清末武漢報刊的誕生与西学東漸、
 第3章 《湖北学生界》与思想啓蒙和革命宣伝、
 第4章 湖北地方官報与商務、教育之革新、
 第5章 《江漢日報》与晩清革命和革命文学、
 第6章 革命報人:何海鳴与胡石庵、
 第7章 武漢政党報刊与民初政壇、
 参考文献



張天星編著『晩清報載小説戯曲禁毀史料彙編』上下
北京大学出版社2015.10

 内容は以下のとおり。
 ============
 前言、
 凡例、
 上編 禁毀令章
  官方法令(1869-1911)、
  民間約章、
 中編
  査禁報道(1870-1911)、
 下編 禁毀輿論
  論説、
  新聞(1869-1911)、
  広告、
  歌曲、
 索引、
 後記




王摯『清末民初『藝術』身▲的確認』
北京・中国社会科学出版2015.7 東北師範大学文学院文昌論叢

2016.3.25
 内容は以下のとおり。
 ============
 李洋「“文昌論叢”序言」、
 第1章 引言、
 第2章 小説界革命:“公性情”基礎上的“新政治”、
 第3章 図書分類法変遷与小説“藝術”観的孕育、
 第4章 小説“藝術”与現代中国審美領域的発生、
 第5章 反思新小説:“以美為帰”、
 第6章 小説与“修辞之公例”、
 第7章 尾声、
 参考文献、
 後記







2016.3.23
 上の雑誌にはそれぞれ古二徳論文が収録されています。

 古二徳(CESAR GUARDE-PAZ)「【書評】Wu Renhua ed.呉仁華編『Lin Shu duben :林紓読本』」(嶺南大学)『JOUENAL OF MODERN LITERATURE IN CHINESE 現代中文文学報』第12巻第2期 2015.5.1
 古二徳(CE/}SAR GUARDE-PAZ)「Lin Shu’s Unidentified Translations of Western Literature 林紓未被辨識的西方文学訳本」新加坡『亜州文化 ASIAN CULTURE』第39期 2015.8





(美)魏愛蓮著、馬勤勤訳『美人与書:19世紀中国的女性与小説』
北京大学出版社2015.11 文学史研究叢書


2016.3.10
 陳平原「総序」、魏愛蓮「中文版序」、第1章 従17世紀到19世紀のほかに、第2部分 作為小説作者話形塑者的女性に第8章女性、出版与晩清的文学思潮があります。参考文献、訳後記も。




連燕堂『林紓:訳界之王』
瀋陽・遼寧人民出版社2015.9 文化怪傑


 内容は以下のとおり。
 ============
 1 出身貧寒而刻苦力学、
 2 七上春官但終身不仕、
 3 畏天循分亦狷狂憂国、
 4 不〓外文却訳作如林、
 5 従擁護民国到眷恋清室、
 6 反対新文化運動的主将、
 7 自奉簡朴而助人為楽、
 8 筆耕不輟并老而弥勤、
 附録:銭鍾書「林紓的翻訳」





a 顔瑞芳編著『清代伊索寓言漢訳三種』台湾・五南図書出版股▲有限公司2011.3



b 庄際虹編『伊索寓言古訳四種合刊』上海大学出版2014.8 近代名訳叢刊



c 内田慶市『漢訳イソップ集』ユニウス2014.2.28 文化交渉と言語接触研究・資料叢刊3



2016.3.7
 林訳『伊索寓言』は上の3種で読むことができます。
 ただし、aとbは復刻。しかも底本とした版本についての説明ありません。見れば後版です。
 信頼できしかも珍しいのはcの影印版(搏c渉旧蔵)です。初版であることは特記すべきでしょう。
 研究論文を読むと、『伊索寓言』を論じて版本に言及するものは多くありません。書いてあるのを見ると上海図書館に所蔵されるのは第四版だそうです。
 研究者の多くは、初版と再版は同じだと考えているらしい。対照比較すればそれが誤りであることがすぐにわかります。
 寓話の順序が異なる、後版では挿絵が増えていたりするのです。
 興味深いことです。






凌叔華著、桃生翠訳『花の寺』
伊藤書店1940.9.15再版


2016.2.26
 訳者の桃生翠(もものお みどり)は、澤田瑞穂(1912-2002。天理大学、のち早稲田大学教授)の筆名です。
 訳者のことばでは、翻訳『花の寺』の印税で北京へ行ったとのこと。
 訳書は訳者の手元には1冊もないとも聞きました。
 たしかに早稲田大学図書館『風陵文庫目録』の3251『花之寺』(上海・新月書店1929.7再版)を収録しますが、翻訳は見あたりません。



2016.2.24(追加1件)
 拙訳『上海のシャーロック・ホームズ』について以下の書評がネットで公表されました。

 http://iledelalphabet.hatenablog.com/entry/2016/02/08/121157
 クリックしてジャンプしないばあい→マウスの右ボタンで「新しいウインドウで開く」を選択してください。

 http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20160224/1456272607

 http://blog.livedoor.jp/sherlockology/

 また『東方』第421号「にほんのほん」36頁にも紹介があります。





張雪峰『福建近代出版史研究』
北京・中国書籍出版社2015.4 万象学術文庫


2016.2.16
 以下のような書籍です。
 緒論、第1章 晩清時期福建近代出版業的創始があります。
 ほかに、
 附録1:福建近代出版大事記、
 附録2;近代〓版図書輯録、
 附録3:福建近代報刊輯録、
 参考文献





呉趼人著、超侠編訳『新石頭記』
鄭州・海燕出版社2015.1 世界科幻名家名作


2016.2.13
 以上のような書籍です。



2016.2.8
 過日、文娟『文学場域変革中的交融共生――掃葉山房説部及雑誌刊行研究』(上海大学出版社2015.11)を紹介しました。
 「附録4 《申報》所刊雷〓的謝贈文字」に受贈図書について収録していて参考になります。
 私は、以前から『繍像小説』の発行遅延問題を解決するために新聞広告を利用にしています。
 該書「附録4」は、その役に立ちます。
 ところが、1ヵ所が従来の広告記録からはずれる。
 該書第275頁第2-3行に「第四十九,五十册《繍像小説》」とあります。1905年8月16日(旧暦七月十六日)です。前後と一致しません。
 文娟氏に問い合わせたところ、次の写真をいただきました。
 

 確かにそのように書いてあります。
 そこで、文娟書のページから抜き出して以下のようになることを知らせたのです。

 第274頁 1905.7.9 第三十五期《繍像小説》
 第275頁 1905.8.16 第四十九,五十册《繍像小説》
 第275頁 1905.12.17第四十五,六期《繍像小説》
 第275頁 1906.2.28《繍像小説》第四十九至五十二期

 『繍像小説』第49、50期のみが時間の流れに合致していないことが一目瞭然です。
 文娟氏から、別の広告を示されました(旧暦は樽本の注)。

 1905.7.25(六月廿三日) 36-38期
 1905.9.10(八月十二日) 41-42期

 これならば、従来の調査と一致します。
 『文学場域変革中的交融共生』は近く再版されるから、その時訂正するつもりだとお知らせをいただきました。





張曉陽 XIAO YANG ZHANG, SHAKESPEARE IN CHINA : A COMPARATIVE STUDY OF TWO TRADITIONS AND CULTURES.
1996



李如茹 LI RURU, SHASHIBIYA: STAGING SHAKESPEARE IN CHINA.
2003



MURRAY J. LEVITH, SHAKESPEARE IN CHINA.
2004/2006



ALEXANDER C. Y. HUANG, CHINESE SHAKESPEARES: TWO CENTURIES OF CULTURAL EXCHANGE.
2009


2016.2.3
 中国におけるシェイクスピア研究についての英文著作を集めてみました。
 研究論文は別です。





文娟『文学場域変革中的交融共生――掃葉山房説部及雑誌刊行研究』
上海大学出版社2015.11


2016.1.25
 内容は以下のとおり。
 ============
 郭豫適「序言」、
 緒論、
 第1章 掃葉山房与小説出版的結縁、
 第2章 革新歩履維艱;長篇通俗小説的刊行、
 第3章 変革突破与回帰伝統:筆記小説的刊行、
 第4章 商務印書館模式的借鑑与拓展;民国時期説部書籍営銷策略、
 第5章 近代文学期刊出版与転型中的《文藝雑誌》、
 第6章 新旧意識交織的編輯雷〓及其小説創作観、
 第7章 《織雲雑誌》新方向的曇花一現、
 第8章 時代潮流的映射;代售的作品与代発行的雑誌、
 結語、
 附録1 掃葉山房説部作品知見録、
 附録2 《申報》所刊掃葉山房説部及雑誌広告編年、
 附録3 《申報》所刊掃葉山房代售小説及雑誌広告編年、
 附録4 《申報》所刊雷〓的謝贈文字、
 参考文献、
 還在路上(代後記)





樽本照雄編訳『上海のシャーロック・ホームズ ホームズ万国博覧会 中国篇』
国書刊行会2016.1.20 定価:2,400円+税


2016.1.24
 オビより。
 世界のホームズ・パロディを集めたシリーズ、刊行開始。
 ホームズ物語が連載中だった時代に、中国人作家たちによって書かれた「贋作」があった!
 1904年〜1907年(清朝末期)に中国の新聞・雑誌に連載された、ユーモアから本格ミステリまで、さまざまなパロディを集めた作品集。

 冷血著「上海のシャーロック・ホームズ 最初の事件」、
 天笑著「上海のシャーロック・ホームズ 第二の事件」、
 ワトスン著、鴛水不因人訳「深く浅い事件」、
 冷血著「モルヒネ事件――上海のシャーロック・ホームズ 第三の事件」、
 天笑著「隠されたガン事件――上海のシャーロック・ホームズ 第四の事件」、
 桐上侶鴻訳「福爾摩斯最後の事件」、
 ワトスン著「主婦殺害事件」、
 作品解説、
 あとがき


2016.1.18
 『清末小説から』第121号(2016.4.1予定)の目次は以下のとおりです。
 ========================
 いくたびかの阿英目録13………樽本照雄
 日本語訳『海上大冒険談』の底本………神田一三
 《毒美人》等原著鑑定及《東方雑誌》佚名訳者身▲研究………古二コ
 漢訳『奇獄』の謎3――結論検証篇(上)………沢本香子



黄霖校注『世博夢幻三部曲』
上海・東方出版中心2010.1


2016.1.14
 内容は以下のとおり。
 ============
  王蒙「走向世界与走向我們」、
 梁啓超「新中国未来記」、
 呉趼人「新石頭記」、
 陸士諤「新中国」、
 それぞれに黄林の導言あります。




(英)索士比亜SHAKSPEREママ (蘭卜散文) 訳者不記『〓外奇譚』
達文社、刊年不記


2016.1.13
 ラム『沙翁物語』の漢訳本です。複写で入手しました。奥付がありません。一般には1903年の刊行にしています。
 SHAKSPEREと綴る版本もありますから誤りではありません。
 叙例、本文は「海外奇譚」です。こちらの呼称がよく使用されます。ただし、阿英目録では「海外奇談」と誤記する。中国では「譚」と「談」は同一視することが多いです。
 注目すべきなのは「叙例」です。漢訳者は、シェイクスピア劇が詩であり、ラム本が散文であることを明確に区別しています。区別できないのが、現代の研究者です。




(日)蘆花生著 (日)惜月軒訳編『(漢訳小説)不如帰』上巻
発行所:北京・院花書局 印刷所:日本・共成舎 光緒32.8.20(1906.10.7)


2016.1.3
 徳冨健次郎(蘆花)「不如帰」1900の最初の漢訳は、塩谷栄訳為英文 林紓、魏易重訳(1908)が有名です。
 それよりも上記の漢訳が1906年刊行で先行します。







2016.1.1
 本年もよろしくお願いいたします。


 『清末小説から』第120号を掲げました。





公 開 中
清末民初小説目録X(エックス)
Catalog of late Qing and early Republican fiction. X

 説明+本文ファイル qmbookx.pdf 23.10MB

 ダウンロードできます。You can download.






清末小説研究会全記録
1997-2015.11.19


 清末小説研究会ウェブサイトの全ファイルです。1-2は収納場所が違うだけで内容は同じ。

 1 google https://drive.google.com/open?id=0B9fUzbPLw-_sMTdwTjRoWS1OV0k
 2 microsoft https://onedrive.live.com/redir?resid=EA5DFFD590AA8F68!507&authkey=!ADfUnfp21xyqC8E&ithint=folder%2chtml

 全体で約350MB、約1,500ファイルで構成されています。
 全部をダウンロードするには長い時間が必要です。ご注意ください。
 index.htmlをクリックすれば全体が関連づけられて閲覧することができるでしょう。
 2015.11.19までの過去のファイルは、上記の場所に固定し更新しません。あくまでも参照用です。
 今後の更新ファイルは、従来通りの清末小説研究会ウェブサイトでご覧ください。
 お役に立てばさいわいです。




はじめに
 『清末小説から』の最新号所収の論文と『清末小説』は、いくつかを本ホームページで読むことができます。
 なお、『清末小説』のバックナンバーおよび『清末小説から』は、上の「清末小説研究会全記録」をご参照ください。
 これまでの研究会活動を紹介するかわりに雑誌『清末小説(研究)』の編集ノートをあつめた編集ノート集をかかげます。おおよその活動が理解できるでしょう。

あらためまして
 中国の清末小説(しんまつ しょうせつ)を専門に研究している会です。清末とは、清朝末期のことを指します。厳密にいえば、「中国の」と付ける必要はありません。清末は、中国にしか存在しませんから。まあ、丁寧に言っております、くらいのことですのでご了承ください。
 年代でいえば1900年代から1911年の辛亥革命をへて五四文学前です。
 日本ならば、明治30年代から大正初期にあたります。
 というわけで、清末小説を専門にしているといっても、中華民国初期の小説も含んでおりますので、誤解のないようにお願いいたします。
 それならば、いっそのこと「清末民初小説研究」と名づけていいようなものの、長いです。
 研究会と称していますが、組織はありません。会員もいません。ご了承ください。
 定期刊行物として季刊の『清末小説から』(ウェブでの公開を継続中)を発行することが研究会の目的です。年刊の『清末小説(しんまつしょうせつ)』は第35号2012で終刊しました。