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2000.12.15
 『繍像小説』連載のホームズ物語を見ていて奇妙なことに気づきました。
 「マスグレイヴ儀式事件(墨斯格力夫礼典案)」すなわち、「マスグレイヴ家の儀式 The Musgrave Ritual」についてです。
 この漢訳は、『繍像小説』第8-9期(癸卯七月十五日1903.9.6-八月初一日1903.9.21)に連載されています。原本2種類(初版と後刷り)を見る限りでは、そうなっています。
 ところが、上海書店影印版の『繍像小説』では、掲載は第8期のみなのです。第9期には掲載されていません。
 よく見れば、原本第9期掲載(4-9丁)の柱には、「第八期」とあります。上海書店が影印した時、それを根拠に、原本とは違えて第8期に移動させたとしか考えられません。
 こまかなことですが、やはり原本通りに記述する必要があるでしょう。目録、年表の訂正が必要です。



2000.12.11

台湾・世界書局版『(新版挿図本)福爾摩斯探案全集』全8冊

 コナン・ドイル作のシャーロック・ホームズ物語全60篇は、現代中国でもそのすべてが漢訳されています。
 A・柯南道爾著、丁鍾華、袁棣華等『福爾摩斯探案集』全5冊(北京・群衆出版社1979.2/1981.3北京第4次印刷-1981.5)が、それです。
 翻訳作品は、あるにしても、現代中国において、ドイル研究は進んでいる、とは言いにくい。なにしろ1960年代に、探偵小説研究を全面的に禁止した過去があるからです。
 研究が冷え込んでいても、1910年代以降、中国でのドイル熱が、日本をうわまわる勢いを見せていた歴史的事実までも否定することはできません。
 ホームズ(福爾摩斯)の名前を冠した全集と称する出版物が、中華書局(1916)、大東書局(1925)、世界書局(1927)、三星書店(1935)、大通図書社(1937)、重慶・上海書店(1943)などから刊行されているのを見れば、それで十分でしょう。
 ところが、上にあげたホームズ全集は、日本で見ることはできません。図書館に所蔵されていないのです。まあ、それも当たり前といえば、そうです。あの有名な商務印書館の「説部叢書」「林訳小説叢書」の全冊揃いを所蔵する日本の図書館は、存在していないのですから。ましてや、ホームズ全集においておや(私の誤解であればいいのですが)。
 たとえば、「福爾摩斯探案大全集(標点白話)」第1-13冊については、つぎのように説明してあります。

 柯南道爾著 程小青等訳 上海・世界書局1927.2/1930.3再版■共収偵探小説54篇,第一、二冊為《冒険史》,第三、四冊為《回憶録》,第五、六冊為《帰来記》,第七、八冊為《新探案》,第九冊為《血字研究》,第十冊為《四簽名》,第十一冊為《古邸之怪》,第十二冊為《恐怖谷》,最後一冊為挿図集。書前有(美)威爾遜序、程小青序、《柯南道爾小伝》、《関於福爾摩斯的話》等。[民外0888][現代701]

 作品名を見れば、いかにも全60篇が翻訳されているように思われる。しかし、「54篇」だと明記してあります。おかしなことです。
 台湾で発行されている全集があります。これが、なかなかに興味深いのです。

柯南・道爾著 程小青等訳『(新版挿図本)福爾摩斯探案全集』全8冊(台湾・世界書局1927-2000.8修訂1版)

 訳者の程小青という名前と初版の発行年でわかる通り、この台湾版全集は、上海・世界書局本を復刻したもののようです。ホームズ物語全60篇が収録されています。ということは、初版も全60篇が揃っていた、と考えていいのではないでしょうか。
 速断は、禁物です。最終的には、上海・世界書局本をさがして確認する必要があるでしょう。それにしても、おもしろい本があるものですね。





2000.12.6
 『張元済日記』について短文を書きました。単なる紹介です。こちら*へどうぞ。





2000.12.3
 『続包探案』について短文を書きました。こちら*へどうぞ。



2000.11.25
 樽本照雄『初期商務印書館研究』の「あとがき」をかかげます。



2000.11.22
『清末民初小説年表』の乱丁(再訂正)
 乱丁について、『清末民初小説目録』ではなく、『清末民初小説年表』だとのご指摘がありました。おっしゃる通りです。感謝>渡辺浩司様
 過去のお知らせの「目録」を「年表」に訂正いたします。
 印刷所に問い合わせたところ、製本所のミスであるとの返答でした。



2000.11.16
『清末民初小説年表』の乱丁
 『清末民初小説年表』に乱丁があることが発見されました。
 「著訳編者索引」63-70頁がそれです。おわび申し上げます。




SHERLOCK HOLMES in London


2000.11.9
 『華生包探案』は、誤訳である、という短文を書きました。
 その短文は、ホームページのデザイン変更にともない*に移動しています。



2000.10.28
 次号『清末小説から』の目次予告です。なんと32頁になります。新世紀大サービスですね。

『清末小説から』第60号 2001.1.1発行予定
『游戯報』の周樹人…………樽本照雄
《小説林》版本、銷數及刊期問題瑣談………郭 浩帆
『月月小説』ほかの重版……樽本照雄
訪書偶記2……………………張  純
『「朝日新聞」文庫目録』をもとにした実地
  調査による『新編清末民初小説目録』およ
  び『清末民初小説年表』補………渡辺浩司
一九〇七年小説略説(上)…武  禧
【書評再録】
八十春秋 一目了然…………范 伯群



2000.10.11
 『清末小説』第23号を発行しました。中国書籍専門店でお買い求めください(1冊3,000円+税)
 誤植のご指摘をいただきました。感謝>渡辺浩司氏

表紙 李伯元遺稿(1) → 李伯元遺稿(2)
2頁倒7行 同年十二月 → 光緒十四(1888)年十二月
11-7 讃えたあとて → 讃えたあとで
13-8 矛盾をする → 矛盾する
14-D3 受けてた → 受けていた
19-D7 李(津) → 利(津)
25-D10 た」 → た。
33-4 あまりつづ → あまりずつ
37-D1 水み囲まれて → 水に囲まれて
39-1 私はお母さんは → 私とお母さんは
39-4 降ってきてきました → 降ってきました
48-14 我這個輓救 → 我這個挽救
49-4 読むことできる → 読むことができる
57-D11 第50官 → 第50巻




SHERLOCK HOLMES in London


2000.10.9
「包探」と「議探」
 日本語の「探偵」を意味する中国語には、「包探」「探偵」「偵探」などがあります。
 現在は、「偵探」が常用されているのは周知のことでしょう。
 それらに加えて「議探」という単語が使用された事実を知りました。
 成都『啓蒙通俗報』という木刻雑誌に、漢訳ホームズ物語の「毒蛇案」(まだらの紐)が連載されており、これの解説に「議探」を説明しています。
 警察関係の探偵は「包探」とし、これと区別して、民間の私立探偵を「議探」と翻訳するというのです。
 1902年のことです。日本でいえば明治35年という早い時期に、これほどまで厳密に区別して漢訳している事実に目が引かれます。
 上海の『時務報』にしてもこの『啓蒙通俗報』にしても、掲載している文言による漢訳ホームズ物語は、いずれも英文原作に忠実な翻訳であることを知るのです。
 ただし、「議探」という翻訳語が中国で定着することはなかったようで、今では、忘れられているように思います。


2000.9.30
 竹村則行氏のお名前が間違っているとのご指摘をうけました。
 おわびして訂正いたします。感謝>渡辺浩司様
 書店名も間違っていたので、これも訂正しておきます。  なお、『説倭伝』は、花書院(2000.8.28)2,500円(税込)で、連絡先は、e-mail:jb2t-srmt@asahi-net.or.jpとなっております。ご参考まで。


2000.9.29
 竹村則行氏によって紹介された『説倭伝』が、このたび日本・花書院より影印出版されました。
 全文が読めるだけでなく、附録として『中日議和紀略』と氏の解題になる「清末小説『説倭伝』に全文転載された李鴻章編『中日議和紀略』をめぐって」も収録されています。
 『清末小説から』第56号には、竹村則行「『説倭伝』から『中東大戦演義』へ」を掲載していますから参照してください。

2000.9.28
 本年7月、蘇州大学において「《中国近現代通俗文学史》国際学術討論会」が開催されました。
 その国際学会へむけて私が書き送ったのが「中国近現代通俗文学史国際研討会へのメッセージ」です。原稿は、包敏氏によって漢訳され「致中国近現代通俗文学国際研討会」と題して会議手冊に掲載されています。
 日本語原稿を掲げましたので興味のあるかたは、どうぞ。


2000.8.31
 『清末小説から』第59号の誤植をご指摘いただきました。感謝>渡辺浩司氏
 本ホームページ掲載予定のものは、すでに訂正をほどこしています。
−−−−−
1頁目次  武 禧21 → 武 禧20
4頁右10行 上のよう英語原文 → 上のような英語原文
24頁左20行 《清末民初 → <清末民初


2000.8.29
 平山雄一氏より複写をいただき、清末翻訳小説の2件について詳細が判明しました。

1●M0522*秘密党 (偵探小説) (英)顧能著 楊心一訳 上海北京・有正書局 光緒32.12.1(1907.1.14) 小説叢書1=10
 『新編清末民初小説目録』に掲載した通り、この作品の原作者と原作名は、COULSON KERNAHAN“SCOUDRELS & CO.”(1901)です。封面と扉は、時報館印行。ARTHUR CONAN DOYLE“THE ADVENTURE OF THE GOLDEN PINCE-NEZ”ではありません。

2●F0397*福爾摩斯最後之奇案 (偵探小説) 22節 白侶鴻訳述 上海・新世界小説社、上海・飛鴻閣、上海・日新書荘 光緒33.4中旬(1907)
 本文は、「福爾摩斯之最後案」、奥付は、「福爾摩斯最後案」。[阿英159]が「(英)柯南道爾著」と記録するものですから、誰しもがホームズものだと考えるのも無理はありません。しかし、実物を見れば「柯南道爾」の名前は記載がなく、これはホームズものの贋作です。ですからEVA HUNGが“THE FINAL PROBLEM”1893.12とするのは誤りなのです。


2000.8.23
 ロンドンの英国図書館に設置された電脳群には、インターネットに接続しているものがありました。本研究会のホームページがどのように表示されるのか興味あります。つながれば、予想した通り文字化けの羅列です。電脳に日本語フォントが収納されていなければ表示するわけがありません。世界に向けて発信していても、文字の壁があるわけですね。
 それはそうと、お知らせとお願いです。
 私は、マイクロソフトの製品は使用していません。ウイルス感染防御のためです。ですからワード・ファイルは無効です。
 本研究会発行の刊行物に投稿をご希望のかたは、電子メールにて日本語のテキストファイルでお送り下さい(その場合も印刷した原稿を別送のこと)。
 中国語のワード・ファイルおよび添付ファイルは、同じく無効です。
 中国語原稿は、印刷したものを郵便でお送りくださるのが確実です。
 文章は短く、手書き原稿は丁寧にお書き下さい。(ワープロ歓迎)
 原稿締切:『清末小説から』毎年7月(12月発行)、『清末小説から』随時。
 ただし、送られた原稿をすべて掲載できるとはかぎりません。ご了承を。



DALI in London


2000.8.8
 『清末小説から』第59号の発行予告です。
『清末小説から』第59号 2000.10.1
「航海少年」原作探索………樽本照雄
太谷學派點滴…………………蔡 廣林
訪書偶記1……………………張  純
一九〇六年小説略説(下)…武  禧
香港明清文學國際學術研討會・晩清小説專題側記…李 慶國
【書評再録】
樽本先生的貢献和中国学者的任務……顔 廷亮
清末小説から


2000.8.7
 本年も『清末小説』を発行します。順調に編集が進んでおり、予定通りの発行となるでしょう。李慶國論文と王學鈞論文は、昨年にもらっていたものです。締め切りと著者校正の関係で1年遅れになりました。力作ぞろいで大幅増ページになります。ご期待ください。

『清末小説』第23号 目次予告

劉鉄雲「老残遊記」と黄河(4完)………樽本照雄
劉鶚與黄葆年:“二巳傳道”續考…………王 學鈞
《繍像小説》創辧、刊行歴史追溯…………郭 浩帆
『官場現形記』の海賊版をめぐって………大塚秀高
「救劫伝」の作者艮廬居士は胡思敬か……沢本香子
  ――附:「救劫伝」第12-16回
青浦陸士諤家世生平考辯……………………田 若虹
《造人術》及其飜譯者………………………劉 徳隆
《啓蒙通俗報》篇目匯録……………………李 慶國
その他


2000.8.3
 2000.4.29でお知らせしました桜井鴎村の翻訳シリーズに関してです。
 その中に
 7 殖民少年 HARRY TRAVERTON?
というものがありました。漢訳名は、「澳州歴険記」です。
 英文原作を確認しましたのでお知らせします。
“Harry Treverton”edited by Lady Broome, George Routledge & Sons, London 1889。
 原文の書名の一部は“Treverton”が正しいのです。
 これらの原作を確認したことなどについては、『清末小説から』次号をご期待ください。


2000.7.9
 漢訳されたホームズものを原典にさかのぼって調査することは、それほど簡単なことではありません。まず第一に、漢訳作品そのものを目にできるかどうか、これから問題がはじまりますから。
 ドイルの作品でもホームズものを離れると、一段と調査が困難になるような気がします。
 さいわい、藤元直樹編「コナン・ドイル小説作品邦訳書誌」(『未来趣味』第8号古典SF研究会出版局2000.5.3)がでています。
 この大変な労作をてがかりにして、今まで不明であった原典を(少しですが)見つけました。ご報告します。

1.秘密窟中一夕談 (虚無党案)
 (英)A.CONAN DOYLE著 詩屏、谷蘋合訳 『小説叢報』3年2期 1916.9.10
 ARTHUR CONAN DOYLE“A NIGHT AMONG THE NIHILISTS”1881.4
2.黒別墅之主人 (復讐小説)
 (英)科南達利著 (周)痩鵑訳 『礼拝六』47期 1915.4.24
 ARTHUR CONAN DOYLE“THE LORD OF CHATEAU NOIR”1894.7か?未確認

 今後とも調査を継続します。


2000.7.6
 漢訳ホームズものの原作すべてが、判明しているわけではありません。原作がわからないのですから、『新編清末民初小説目録』では、その部分を空白にせざるをえませんでした。
 その後、いままで原作不明であった作品のいくつかが、あきらかになっています。
 たとえば、平山雄一氏から教えていただいた1作品があります。
●潜艇図 (福爾摩斯最近探案)
 (英)A.CONAN DOYLE原著 水心、儀〓合訳 『小説叢報』4-5期 1914.9.1-10.20初版/1915.3.25再版
 これは、ARTHUR CONAN DOYLE“THE ADVENTURE OF THE BRUCE-PARTINGTON PLANS”1908 です。

 また、次の3作品も、原作が判明しました。

●託病捕凶 (福爾摩斯最近探案)
 (英)A.CONAN DOYLE原著 留氓訳 儀〓述 『小説叢報』2期 1914.6.10
 ARTHUR CONAN DOYLE“THE ADVENTURE OF THE DYING DETECTIVE”1913.12
●紅圏党 (福爾摩斯探案)
 痴儂、何為 『小説叢報』8期 1915.2.8
 ARTHUR CONAN DOYLE“THE ADVENTURE OF THE RED CIRCLE”1911.3-4
●贋婿
 胡寄塵 『春声』5期 1916.6.1
 ARTHUR CONAN DOYLE“A CASE OF IDENTITY”1891.9
 こちらなど、「此文材料、大半從西籍得来、刪節添補、与原文絶不相同」と称し、原作とはまったく異なると作者が説明します。なんのことはない、“A CASE OF IDENTITY”に別の殺人事件をくっつけただけのこと。


2000.6.30
 『初期商務印書館研究』を精読のうえ誤植について三度目のご指摘をいただきました。感謝にたえません>渡辺浩司氏


2000.6.25
 『初期商務印書館研究』の誤植を再度ご指摘いただきました。感謝>渡辺浩司氏


2000.6.24
 拙著『初期商務印書館研究』を発行したためか、商務印書館に言及する文章にしらずと目が行きます。
 松村茂樹著『近代中国の文化人と書』(研文出版2000.6.26)をいただきました。張元済の項目に当然ながら商務印書館への言及があります。
 『しにか』7月号は、特集・上海歴史探検です。
 野澤俊敬「上海文学散歩」に書かれた商務印書館部分を下に引用します。

 「一八九七年、中国近・現代を代表する出版社、商務印書館が創立している。江西路徳昌里に印刷所を開業し、河南路に社屋を設けた*1。その現存建築は、現在は科技図書公司*2(河南中路二二一号)になっている*3。商務印書館は一九〇七年に宝山路に総本社を移し、(中略)/この商務印書館からは、林紓主編の翻訳雑誌『訳林』*4(一九〇一年創刊)や、晩清四大小説雑誌のひとつである『繍像小説』(一九〇三年創刊)などが刊行されている。晩清小説の名作である李伯元の『官場現形記』*5、劉鶚の『老残遊記』は、『繍像小説』に連載された。また、鴛鴦胡ママ蝶派の文芸雑誌『小説月報』(一九一〇年創刊)も商務印書館の刊行である。(後略)」(84-85頁)

 商務印書館と金港堂が合弁会社であったことに触れていないのは、残念です。
 *印で示した5箇所について説明しましょう。【】内に『初期商務印書館研究』の言及頁を注記します。
 *1 商務印書館が創立と同時に江西路徳昌里に印刷所を、河南路に社屋を設けたように読めます。事実は、創立時は、江西路徳昌里のみです【12、19頁】。「河南路の社屋」というのは、5年後の1902年の発行所のことでしょう【12、75頁】。
 *2 「科技図書公司」は、正確には、「中国科技図書公司」です【77頁】。
 *3 文章からは、商務印書館が「科技図書公司」にとってかわられたようにしか読めないでしょう。実際には、商務印書館の看板がかかっていますので、消滅したわけではありません。写真を掲載しておきました【75、77頁】。
 *4 『訳林』は、商務印書館が刊行したものではありません。印刷を請け負っただけです【27頁】。
 *5 「晩清小説の名作である李伯元の『官場現形記』」は、有名です。有名ですが、ここに書かれているように商務印書館の『繍像小説』に連載されたというのは誤解です。「官場現形記」は、李伯元自身が発行していた日刊紙『世界繁華報館』に連載されていました。『繍像小説』に連載されていたのは、「文明小史」ですから、これと勘違いしたのではないでしょうか。
 上海の福州路に行けば、商務印書館が現存していることは、誰もが知っている種類のことだと思っていました。ところが、商務印書館の名前が有名なわりには、正確な知識が普及していないことに改めて吃驚するのです。
 私の『初期商務印書館研究』が、少しでも研究のお役に立てばいいのですが。


2000.6.23
 『初期商務印書館研究』の誤植をご指摘いただきました。感謝>渡辺浩司氏
 また、渡辺氏より『清末小説探索』の誤植も追加してご指摘いただいております。ありがとうございました。




2000.6.17
 樽本照雄著『初期商務印書館研究』(A5判 上製 箱入り 380頁 限定200部 定価:10,000円+税)を発行しました。商務印書館についての日本で最初の専門書です。かずかすの新事実がもりこまれています。これまで謎とされていた多くの事柄を明らかにしたのも本書がはじめてです。知られていなかった商務印書館と金港堂の日中合弁事業が、その姿を表わしました。
 ご注文は、東方書店(電話03-3294-1001)、燎原(電話03-3294-3445)、(福岡)中国書店(電話092-271-3767)へどうぞ。




2000.6.7
 范伯群主編『中国近現代通俗文学史』上下2冊(南京・江蘇教育出版社2000.4)が出版されました。書影を掲げて短文を書きました。


2000.5.4
 清末小説研究会発行の刊行物はどうすれば入手できるのか。入手方法を書いていないのは不親切だ、というご指摘をいただきました。感謝>森様
 うかつなことで、失礼しました。
 目録、年表、『清末小説』などは、中国書籍専門書店にご注文ください。
 東方書店、朋友書店、(福岡)中国書店、燎原などが扱ってくれます。
 季刊『清末小説から』は、市販していません。印刷したものをご希望の方は、直接研究会あてお申し込みください。前金で1部200円(送料込み)です。
 『清末小説』『清末小説から』の残りバックナンバー(一部のみ。全部ではありません)を本ホームページに掲載します。


2000.5.4
 菊池幽芳の「新聞売子」が漢訳されて「電術奇談」になったことは周知のことです。呉趼人(沃尭)が翻訳にかかわっているのですが、中国では、翻訳ではなく呉沃尭の「再創作」であるとながらく信じられてきました。
 菊池幽芳の日本語原文を検討せずに、ただの憶測にすぎないものが中国では「定説」になっていたのです。
 情報化時代に突入した現在では、清末小説研究もさすがに新局面をむかえています。
 「電術奇談」についても、従来の「再創作」説が退けられたのが、郭延礼『中国近代翻訳文学概論』(漢口・湖北教育出版社1998.3)でした。
 このたび入手した馬祖毅『中国翻訳史』上巻(漢口・湖北教育出版社1999.9)にも、樽本の研究成果を紹介して「再創作」ではなく呉沃尭の翻訳であると述べています(712頁)。


2000.4.29
 桜井鴎村訳『航海少年』の原作がなになのか、長年、さがしていました。
 ようやく解答がみつかったようです。藤元直樹氏よりお知らせいただきました。
 また、『未来趣味』第8号2000.5.3に掲載されています。必要部分を以下に書き抜きます。

1 金掘少年 THE BOY EMIGRANTS by Noah Brooks
2,4 遠征奇談 ROUND THE WORLD by W.H.Kingston
3 二勇少年 ORANGE AND GREEN by G.A.Henty
5 決志少年 THE BOY FROM THE WEST by Gilbert Patten
6 漂流少年 ADRIFT IN THE WILDS by Edward S.Ellis
7 殖民少年 HARRY TRAVERTON?
8 航海少年 JACK MANLY by James Grant
9 不撓少年 TONY THE HERO by Horatio Alger,Jr.
10 朽木の舟 THE WANDERERS by W.H.Kingston
11 侠勇少年 THE BOY EXPLORERS by Harry Prentice
12 絶島奇譚 MASTERMAN READY by Captain Marryat

 研究の大いなる前進につながる快挙であると考えます。


2000.4.20
樽本照雄『初期商務印書館研究』の出版予告
A5判 上製 箱入り 380頁 限定200部 定価:10,000円+税
 このたび、清末小説研究会は、表記書籍を出版します。
こちらをごらん下さい


2000.4.14
 必要があって昔の論文「「官場現形記」の初期版本」をテキストファイルに入力しなおしました。あれから20年ですか。世界繁華報館増注本を日本で発掘したのですが、中国の研究者は、まだその存在の重要性に気づいていないようです。『李伯元全集』が出版されているにもかかわらず、関連する文章には名前があがるだけで検討する余裕がないと見えます。増注本である粤東書局本と崇本堂本の関係について、そろそろ結論が出てもいいのではないでしょうか。


2000.4.8
 『清末小説から』次号の目次を予告します。

『清末小説から』第58号 2000.7.1
『新小説』の重版……………………樽本照雄
《新小説社徴文啓》的價値和意義…郭 浩帆
清末民初京味小説的版本……………于 潤g
一九〇六年小説略説(上)…………武  禧
ピグミーは黒人か……………………大塚秀高
【書評再録】
小説年代紀的意義……………………夏 暁虹
清末小説から


2000.4.1
 「トルストイ最初の漢訳小説――「枕戈記」について」を掲げます。


2000.3.18
 「黄河、鄭州に決壊す――「老残遊記」紀行」を掲げます。


2000.3.15
 『清末小説から』の誤植をお知らせいただきました。感謝>渡辺浩司氏
●第55号(1999.10.1)
1頁目次 糾正誤去 → 糾正誤区
●第56号(2000.1.1)
27頁右倒10 第56号 → 第55号
27頁右倒2 糾正誤去 → 糾正誤区



2000.3.11
 『清末小説から』第57号は、すでに発行しています。渡辺浩司氏より誤りのご指摘をいただきました。
 以下にかかげます。
『清末小説から』第57号訂正−−−−−−−−−−−−−−−−−−
4頁右-3行 張畢来 → 畢樹棠
5頁左15行 第56号 → 第50号
5頁左-11行 苦労したいう → 苦労したという
11頁左9行 除〓曇 → 徐〓曇
11頁左14行 各贈東方雑誌 → 各贈本年東方雑誌
11頁右2、9行 『繍像小説』の発行年月日 → []内は推測
11頁右6行 国文教科書と教授法 → 国文教科書教授法
14頁右4行 誤りをご指摘をいただければ → 誤りをご指摘いただければ
14頁右10、14行 宣統1 → 己酉 (注:1909年であることにかわりはありません)
以上です。感謝>渡辺氏
 本ホームページには、訂正したものを近日掲載する予定です。



2000.3.3
 清末小説研究論文目録・日本篇(1901-2000年)初稿を掲げます。初稿ですから、今後引き続いて手直しする可能性があります。遺漏をご教示ください。とりあえず、というところです。


2000.3.1
 過日、藤元直樹氏よりご教示いただきました「毒帯」について、ご報告します。
 ドイルの“THE ADVENTURE OF THE SPECKLED BAND”1892.2か?と書きました。香港の研究者の記述に拠っています。

>134b D0439/148b D440 毒帯の原作はThe Poison
>Belt(毒ガス帯)ではないか。

 というご指摘です。
 『小説月報』掲載の漢訳を見ましたところ、藤元氏のご指摘の通りでありました。以上のように訂正いたします。ありがとうございました。



2000.2.23
 「救劫伝」の作者・艮廬居士について、現在、二説あります。ひとつは胡思敬とし、もうひとつは張仲清だというのです。
 胡思敬だといいはじめたのは、これも阿英でした。ほとんどの研究者がここでも阿英説を踏襲したのです。
 胡思敬説が、圧倒的に多数ですが、それが正しいかどうかは、別問題です。
 私は、阿英のいう胡思敬説は、間違っているという結論にいたりました。
 詳しくは本年発行予定の『清末小説』第23号をお待ち下さい。


2000.2.16
 藤元直樹氏より年表についてご教示をいただきました。いつもありがとうございます。
−−−−−−−−−−−−
池上正治『中国科学幻想小説事始』(イザラ書房1990.3.31)を紐解きますと、ごく簡単なものですが、巻末に「中国のSF年表」というのがあり、
[19]15 ドイル・李薇・洪荒鳥獣記(失われた世界)
[19]17 ウェルズ・茅盾・三百年後孵化之卵(巨鳥の島)
とありましたので
67b H618/120b H0620 はThe Lost Worldの訳としてよいのでは、また
152b S0024 はAepyornis Islandの訳と思われますが、訳題から見ると、「少年」(時事新報社)の150,151号(大正5年3,4月)に掲載された森皚峰の翻案「三百年目に孵つた卵」を元にしているのではないかとも思われます。
−−−−−−−−−−−−
以上です。


2000.2.15
 『中華読書報』2000年2月2日号に夏暁虹「小説年代紀的意義」が掲載されました。『清末民初小説年表』の書評です。掲げますが、文字コードセットを中国語簡体字に変更しなければ読むことができません。『清末小説から』に再録する予定にはしています。


2000.2.13
 渡辺浩司氏より「『「朝日新聞」文庫目録』(大阪府立図書館編纂、1973.9.1限定再版、清文堂出版)を利用した『新編清末民初小説目録』および『清末民初小説年表』補」をいただきました。いつもありがとうございます。大部なものですので、その結果を別のようにまとめました。間違いがあるかもしれません。その場合は、ご容赦ください。



2000.2.9
 藤元直樹氏より『清末民初小説年表』の誤りをご指摘いただきました。ありがとうございます。
 以下に掲げます。
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7b L0296 累卵東洋
『累卵の東洋』東京堂・明治31.11(国会図書館請求記号YDM95734)か
11b M0634 DANRIT, CAPITAINE(DRIANT, EMILE)
『明日の戦争』兵事新報社・明治27.2(国会図書館請求記号YDM100780)もしくは
『明日の戦争 野戦の部』有則軒本店・明治32.9(国会図書館請求記号YDM310639)か
13b H0142
『絶島奇譚』博文館・明治35.7(国会図書館請求記号YDM101133)
24b M0531 『海島冒険奇譚 海底海軍』→『海島冒険奇譚 海底軍艦』の誤?
28b B0569 THE LISSON BROVE MYSTERY →THE LISSON GROVE MYSTERYの誤?
33b X1074 朽木舟
『朽木の舟』文武堂・明治34.9 (国会図書館請求記号YDM93528)
63b W0442 無名氏
森田思軒『無名氏』春陽堂・明治31.9(国会図書館請求記号YDM101391)
があるが、ヴェルヌとクレジットされていなかったはずなので重訳ではない?
72b S0726 世界発展倶楽部
乾坤独歩(渋江保)『世界発展倶楽部』大学館・明治39.9(国会図書館請求記号YDM94272)か
81b S1064 水蔭叢書 水楼記
江見水蔭『水蔭叢書』博文館・明治43.8(国会図書館請求記号YDM94212)か
91b D0278 地下戦争 楓村居士
町田柳塘(楓村)『地下戦争』晴光館,太洋堂・明治40.9(国会図書館請求記号YDM94458)か
104b B0056 八十万年後之世界 題は涙香訳のタイムマシンの邦題を連想させますね
113b M0537 秘密怪洞 暁風山人
暁風山人『秘密の怪洞』大学館・明治38.12(国会図書館請求記号YDM95140)か
134b D0439/148b D440 毒帯の原作はThe Poison Belt(毒ガス帯)ではないか。六章になっているし、日本でも<武侠世界>に訳された時に「毒帯」の邦題が付いている。
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以上



2000.2.4
 昨年6月、大阪経済大学市民教養講座での要約「近代日中出版社交流の謎」をかかげます。


2000.1.25
 トルストイ最初の漢訳小説は、『托氏宗教小説』だという通説があります。阿英が断定し、王錦厚、戈宝権、郭延礼ら中国の研究者のすべてが、それに従っています。しかし、『托氏宗教小説』よりも早く発表されている作品があるのです。すなわち漢訳名「枕戈記」という小説で『教育世界』に連載されました。二葉亭四迷の日本語訳『つゝを枕』から漢訳したものです。トルストイの原作は、「林木伐採」といいます。
 というような主旨の論文「トルストイ最初の漢訳小説――「枕戈記」について――」を書いて大学紀要に投稿しました(近日発表予定)。郭延礼氏からの連絡によると氏もその事実に気づき、短文を草して雑誌に投稿している、ということです。
 奇しくも日中で同じ主旨の文章が用意されていたのです。研究の世界も狭くなったものだと感じるのは、こういう時ですね。


2000.1.24
 『清末小説から』第57号(4月1日発行予定)の目次です。
 投稿が増えており24頁になります。短文をご用意ください。
★★★
第9回「蘆北賞」受賞のことば……樽本照雄
『繍像小説』の重版…………………樽本照雄
關於“羣學社”………………………郭 浩帆
『図画日報』影印版のこと…………沢本郁馬
晩清稀見小説期刊介紹………………張  純
一九〇五年小説略説(下)…………武  禧
清末小説から


2000.1.16
阿英一杯、批の用心!
 阿英の清末文学研究に対する貢献は、まことに大きい。論文発表、作品目録の作成、『晩清小説史』の執筆出版、叢書の編集による資料保存整理などです。
 のちの研究者は、どれくらい阿英の業績を利用させてもらったかわかりません。
 しかし、阿英を学術上の権威にしてしまえば、その危険性を感知できなくなります。
 たとえば、阿英は、自らが編集した清末小説の復刻本に削除をほどこすとか、叢書所収の作品を部分的に書き換えるとかの操作を実施している実例があります。
 今まで『文明小史』(北京・通俗文藝出版社1955)、「鄰女語」(『庚子事変文学集』1959所収)などが指摘されてきました。
 最近、私が発見した阿英による改変は、艮廬居士「救劫伝」(1901-02)です。『庚子事変文学集』に収録された該作品は、本来16回が存在するにもかかわらず、12回分しか掲載していません。さらに第12回の本文末尾を阿英は勝手に書き換えてしまい、あたかも第12回をもって作品が完結しているかのように装ったのです。
 これは、まさに編集者にとって自殺行為に等しいといえるでしょう。
 さらに驚くべきことは、この阿英による改竄の事実を、今にいたるまで、誰も、中国大陸の研究者を含めて誰も気がつかなかったことです。
 阿英編集本を使用する時は、くれぐれも注意をしなければなりません。
 それだけで研究を進めるのは、危険です。かならず作品原本に当る必要があります。それは手間だ、というのでしたら、はじめから原本のみで研究をするのが一番確実なやり方でしょう。
 遠回りのように見えて、実はそうではない、という好例なのです。


2000.1.14
 渡辺浩司氏より、『清末小説から』第56号の誤植指摘がありました。いつもありがとうございます。

>26頁右14行 竹村規行 → 竹村則行
>26頁右倒3行 林・与 → 林紓与

 本ホームページに掲載のものは、すでに訂正しております。印刷物のみをお目にしている方々に、以上のようにお知らせいたします。


2000.1.7
 創立百周年をすでにすませた商務印書館について、「商務印書館研究文献一覧」を作成しました。日本・金港堂との合弁時期を考えるために役立つと考えます。


はじめに

 中国の清末小説を専門に研究している会です。清末とは、清朝末期のことを指します。厳密にいえば、「中国の」と付ける必要はありません。まあ、丁寧に言っております、くらいのことですのでご了承ください。
 研究会と称していますが、組織はありません。
 定期刊行物として年刊の『清末小説』と季刊の『清末小説から』を発行することが研究会の目的です。『清末小説』は、第22号を、『清末小説から』は、第56号を発行しました。なお、『清末小説』のバックナンバーのいくつかは、中国書籍専門店で印刷したものを購入することができます。
 これまでの研究会活動を紹介するかわりに雑誌『清末小説(研究)』の編集ノートをあつめた編集ノート集をかかげます。おおよその活動が理解できるでしょう。
 また、『清末小説』最新号 と 『清末小説から』最近既刊号 を掲載しておきますのでご覧下さい。
 研究論文目録 として、現在、研究者2名のものを掲げています。おいおい、増やしていく予定で、すでに該当者に作成を依頼していますのでご期待ください。(と書いたのですが、なかなか原稿が送られてきません。『清末小説(研究)』『清末小説から』著者別論文目録)を作成しました)
 研究をめざす人を対象に清末小説研究ガイド97(1997.1.1)を掲載しました(量が多いので動きがにぶいかもしれません)。お役に立てばさいわいです。